基準のない「優秀」は寝言である。

えふしんさん辺りからFBで流れて来た。

なぜ優秀なエンジニアを低待遇で採用してはいけないか

こじらせちゃったんだねぇ…

最初、このエントリを見た時に、「どこか海外のスタートアップのCTO辺りが書いたものを翻訳したんだろう」とか思っていた。そう思いつつ読むと「ふむふむ」と思う部分がないわけじゃない。まぁ、「優秀なエンジニア」をいい待遇で雇うのは当然のことなんだが。

ところが、ちょっと気になって書いた人を調べてみると、どうやらそうではなくて、日本のどこぞの会社のエンジニア(FB的には2hopな人のようだ)が書いたもののようだ。となると、

お前にそれを言う資格はない

ということにしかならない。寝言もこんな文体で書けば、謎の説得力が生まれるとゆーいいサンプルではあるが。

なんでこういった実も蓋もない言い方をするかと言えば、この議論の一番重要なところである、

優秀

についての、何の言及もないからだ。「一エンジニア」が「優秀なエンジニアの待遇を良くするべき」と書くなら、

  • 俺は「優秀なエンジニア」だ
  • 俺の待遇はあまり良くない
  • 俺の待遇を良くするのは当然のはずだ

ということにしかならないからだ。こうまとめてしまえば、「こじらせちゃったんだねぇ」という感想は無理もなかろう。

例えば彼が「どこぞの会社のCTO」であるなら、そこには暗黙のうちに「弊社の定義する優秀なエンジニア」ということが入るだろう。あるいはもっと下がって「チームリーダー」であるなら(そのことをdiscloseしているなら)、「自分のチームの定義する優秀なエンジニア」であろうことが想像出来る。さらに下がって彼がペーペーのエンジニアであっても「ぼくのかんがえたゆうしゅうなエンジニア」を提示していれば、同じ土俵に立って物事が見えるかも知れない。つまり、寝言以上の価値を持たせるためには、件の人は最低でも自分のバックボーンを明示している必要がある。そう、件のエントリは

何を言ったかよりも誰が言ったか

が重要になって来る。

例えば、ここに2人のエンジニアがいる。片方は優れたプロダクトを世間に出して、名も知れている。技術的には申し分がない人だが、能力が高過ぎて見合う仕事がなかなかなくてイマイチ金にならない。もう片方は技術そのものは十人並でしかないが、その分仕事させやすいし、本人もコツコツと業務をやり確実に売り上げを作って行く人だとする。どちらを「優秀なエンジニア」と定義し、どちらを好待遇にするべきか?

正解は自明で、

会社(チーム)の方針に合っている方

である。「能力の高いエンジニア」が存在することが会社の方針に合っているなら、売り上げがどうこうという部分には目をつぶってでも、前者を「優秀」と定義して好待遇にするべきだ。「稼ぐエンジニア」が存在することが会社の方針に合っているなら、能力や名前には目をつぶってでも、後者を「優秀」と定義して好待遇にするべきだ。こういった文脈での「優秀」とは、

個人のベクトルと会社(チーム)のベクトルの内積

であって、それ以外であってはならない。それがブレると、みんなが不幸になってしまう。

「優秀」という抽象的な言葉は、単に「ベクトルの内積」程度の意味でしかない。だから、件のエントリに書かれている諸々は、

太陽は東から昇らねばならない

レベルの話でしかないし(まぁ、西から太陽昇らせる会社は少なくないが)、いろいろ書かれている話は「早い話は俺が優秀なんだから待遇良くしろ」でしかない。

まぁ、ああいったエントリを書きたかったら、「独立」することだ。それは会社を辞めて創業しろとかに限らず、「自分のチーム」を持つとかといった

「優秀であること」を客観的に見る立場

に立ってから言えと。

まぁ、こんな「寝言」でもありがたがる人達がいるというのが、今の日本の不幸かも知れないが。