料理人の質はすぐわかる

とある「有名店」に行きました。

高級店とかそんなんじゃなくて、あるものが「デカい」ということで評判の店です。「あるもの」は私も好きなので、がっつり食ってみたいなぁと、わざわざお昼(ランチメニューらしい)に電車で。

お昼休みちょうどをちょっとだけ外して、13時過ぎくらいに行き、1度目は店が閉まってしまい、2度目に開いていました。ところが、目当ての「デカい」のは売り切れ。内心

潰れろよ

とか思いつつ、「日替わりランチ」を食うことに。

で、その「日替わりランチ」を見て

3度目はないな

ということを確信して、もうその店のことは忘れることに。まぁ、このエントリのネタになっただけでも良いかなと。

その「日替わりランチ」には刺身がついていました。その刺身を見て、もう来る必要はないなということを確信しました。食べるまでもない、と言うか、食べたらそれは気がつかなかったかも知れません。食べる前に「え?」とか思ったわけです。

何がいけなかったかと言えば、刺身の切り口です。切り口が平らじゃなくて、「バリ」が出たような感じになっていました。これはどういうことかと言えば、

包丁が研いでない

からです。切れ味の悪い包丁で刺身を作ると、バリが出たような切り口になってしまいます。そんなことに何の害があるかと言えば、早い話がおいしくないわけです。同じ魚を使っていても、包丁の切れ味次第で刺身の味は大きく変わります。

とは言え、そーゆー、街の居酒屋ですから、凄い魚を使っているわけではないでしょう。切れる包丁を使ったところで凄くおいしい刺身になるわけじゃありません。大差ないっちゃー大差ないわけです。おそらく、そこの料理人は「大差ない」と思ってやったのでしょう。それでもまぁ、安くてボリュームがある定食が出れば、庶民としては嬉しいわけです。官庁街近くなので、それなりのお客が来るでしょう。「デカいの」で有名な店だし。

それはまぁそうなのだけど、料理人が切れない包丁を使うのはいただけません。

そんな1本ん10万もするような高い包丁を使えと言うのではありません。毎日ちゃんと研いだ、ちゃんと手入れされた包丁であれば、それで十分なわけです。1本高々数万円です。

GLOBAK-PRO

こんなんで十分過ぎます。ここに挙げた包丁の説明には、「肉切り」とか書いてあるのですが、万能包丁らしいです。

使いやすい万能包丁

値段も手頃なので余裕が出来たら私も欲しい。とか言いながら、うちの普段使いの包丁は、こいつです。

これもいい包丁。まぁ、どっちも数万の安い方です。青入り本焼き… とかなら高いでしょうが、実用品というレベルであればこんなもので十分らしいです。

と言うのは良いとして、まぁ、包丁は高い高いと言っても、商売道具の人達や趣味の人達にしてみれば、いいものであってもそんなに高いものじゃない。そして、「料理人」となると、それを毎日研ぐのも、仕事のうち。

そういった基本的な心構えがない料理人はダメなんだそうで。

板前の腕は包丁をみれば分かる!?

それは私でもわかります。いいものを買っても、そんなに高いものじゃない。それをちゃんと手入れしても、そんなに大変なものじゃないし、する人は毎日でもしてる。人気店だと途中で切れなくなったりするから、必要なら複数本用意しておく。どれを取っても、そんなにコストのかかるものではありません。単純に

心構え

だけで何とかなります。お金も手間も、「結果」と比べればたいしたものではないのです。

出た料理が良いかどうかってのは、材料にどれだけ金かけてるかとか、どんだけ技術があるかとか、そういった要素が絡んで来るわけですし、こっちがそんなに大金を払ってるわけでもないのであれば、そういったことに多くを望むべきではありません。でも、「心構え」が良い料理人であれば、そういったことを越えた価値のある仕事をしてくれるはず。

そんなわけで、件のお店。こういった「心構え」がダメなんだろーなーということが見えてしまったので、もう忘れちゃっていいなと。デカい唐揚げ食いたかったら、自分で作りゃいいんだから、何も電車に乗って出掛ける程でもありません。

ということで、料理人の「心構え」はそういったことで見えてしまいます。

なんてことを思いながら帰ったのですが、帰る途中、じゃあ

エンジニアの心構え

がわかるのは何なんだろうなと。やるのにそんなに手間やコストがかかるわけでない。でも、腕の悪い奴はそういったものを惜しんでしまう。そういった「何か」があれば、仕事してもらう前に、行く末がわかるんじゃないかなとか。

エンジニアでも料理人でも背景事情は同じです。払った金やら開発チームの余裕やらで、良い成果が出るかどうかってのは、ある程度決まってしまいます。経験のあるエンジニアであれば、期待以上の成果が出せるかも知れません。とは言え、それは与えられた環境に依存する話であって、「質」そのものではありません。もちろん、仕事をしてもらうのですから、結果が全てだということは確かにそうなんですが、仕事を依頼する時には

結果はこれから

ですから、「結果」で評価するわけには行かないわけです。もちろん過去の実績とか見ればある程度はわかるでしょうが、それは結局それまでに与えられた環境やら仕事やらに依存する話なので、そのまま鵜呑みには出来ません。だからこそ、「心構え」が問題になるわけです。

でも残念なことに、「料理人と包丁」みたいなほぼ純粋に心構えが見えるものって、エンジニアにはないような気がします。あるとしたら、それは何なんでしょうね。テストするとかしないとか、コーディングが綺麗かどうかってのは、確かに心構えに関係はありますが、それが出来るだけの余裕も必要ですからね。