遠隔操作裁判に行って来た

遠隔操作裁判について、微妙に中の人に近い立場になったことがあったのと、八木啓代さんに誘われたので、傍聴に行って来た。

って、八木さんの話だと、「空いてるからギリギリに行っても大丈夫だよ」ということだったのだけど、いろいろ話題になったらしくて、傍聴希望者の山。結局傍聴出来ずに、地下の喫茶店でお茶して、裁判が終わるのを待って、記者会見に出ることに。

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江川さんが来ていたので、詳しい会見の様子とかはそっちを見てもらうということで、「技術者視点」での話をちょっと書いておこうかと。

今日のところの論点は、

彼にiesysを作る能力があるか

ということだったようだ。彼の元上司とかが参考人に呼ばれて証言したらしい。

最初に佐藤先生の事務所に呼ばれた時には、私は「彼は犯人かも知れないし、そうでないかも知れない」と思っていたのだけど、そこで佐藤先生に説明を受けてからは、私自身は「無実」の心証を持っている。まぁ、それがあるが故に関わっているのだけど。そして、どうして「無実」の心証を持っているかと言えば、

彼にそんな能力があるとは、とうてい思えない

という理由からだ。もっとぶっちゃけて言えば、

こいつには無理

と思ったと言ってもいい。それくらい、彼にとってiesysを作ることは「無理ゲー」と言っても良い。

そして、今日の公判の焦点は、そこだったらしい。まぁ、ある意味最短コースと言うか「不能」であると認定されてしまえば、「無実」ということになるだろう。ただ、それであるが故に、あまりに過酷な話になる。

彼は、自分の無実を証明するためには、自分が「無能」であることを主張しなきゃいけない。弁護人にしても、彼がいかに無能であるかを主張し、その証拠(証言)を用意することになる。また、検察側の参考人(今回は彼の上司)にも、その逆を証言させることになる。

今回はどうもその辺に話が集中してしまったので、そっちの話となる。記者会見でも同じ。

彼は一応C#の研修とかに出たことがあるらしい。ところが、証拠品や彼の証言によると、研修の課題のうち、

自分で書いた部分は25行

らしく、それもalert()みたいなのを加えたとか、メッセージの内容をいじったとか、そんなのばっかり。コピペ以前の問題だったらしい。研修も「SNSをどーとかこーとか」みたいなものなので、「遠隔操作」みたいなエグいhackをするような類のものは皆無。そりゃまぁ、初歩の研修とかだとそうだろう。

また、彼はその研修の頃は鬱とかそんなのがあって、プログラムが書けない状態になっていた。いや、元からどれくらい書けたか知らんけど。休職中に至っては、精神的にプログラムとか書けない状態であったとのこと。この辺は、プログラマで精神やられた経験のある人や、周囲にそういった人がいた経験のある人ならわかるだろう。つまりは、そういった状態。その中であーゆープログラムが書けるだろうか? C#の研修受けた時から休職までの間にどんどん能力が上がって… とかだったら、ある意味幸せだよなぁ。それにしても、「精神的にプログラムが書けない」から休職してるんだから、休職中にプログラム書く気が起きるだろうか?

また、休職前の頃は、あまりにプログラムが酷くて顧客からクレームが来たとか、酷い状態だったらしい。いろいろ上司が尻ぬぐい的なことをしたりとか、そんなことがあったらしい。

まぁ、そんなこんなで、「記者会見」は、プログラマとしては

公開処刑

と同じ状態だった。いかに無実を勝ち取るためとは言え、ギリギリやられたら、私なら泣く。彼もきっと泣きたいだろう。彼が泣かずに、認めているのは「無実を勝ちとるため」ではなくて、

反論の出来ない事実

だからだろう。それにしても、彼のライフはゼロだろう。会見の後で声かけようかと思ったけど、ぼーっとしてる感じでいろいろ声をかけ辛かった。

他方、検察側は彼がとても優秀で、件のプログラムは簡単に書けるとゆーことの主張だ。ある意味、彼は犯行を認めさえすれば、

ロクな能力のないクソグラマ

の謗りは免れることになる。検察側の主張は実に甘美だw

今日(もう昨日か)の公判では、その辺が論点だったらしい。それにしても、彼の「能力」という論点は、程々にしておかないと、彼の精神がヤバい。いや、彼の精神だけじゃなくて、私の精神までヤバくなる。実際、記者会見の最中に中座したくなるくらい、残念な話がされていた。まぁ、その辺の詳しいことは、江川さんが書いてくれるだろうから、そっちに任せたい。マジで泣きたい。それにまぁ、「能力がない」なんてのは、悪魔の証明にしかならないのだから、早々に切り上げて欲しいところだ。

会見の感想は以上。以下は、前回公判のことへの感想。

片山氏は今は無職である。検察側の鑑定をやった某社は、彼がそんなに能力が高いと言うのであれば、彼が有罪になって刑期を終えた後には、彼を雇うだろうか? 「ほとんどコピペで25行しかオリジナルがないレポート」を出した人が、数ヶ月後にはこんなソフトが書ける。実に素晴しいポテンシャルではないか?

検察側鑑定書には、「コピペでも作れる(要旨)」とか書いてあったらしいが、某社ではそんなヌルいことで仕事出来るのか?

PS.

なお、遠隔操作裁判に関連して、近い将来

遠隔操作ハッカソン

なるものをやることを計画している。

公判の進み具合や、出て来る証拠や、検察のシナリオによって、いつ、どんな内容でするかは流動的なのではあるけれど、いくつかの協賛を得てやる予定にしている。

おそらくは、検察側が「出来る」と主張したものが本当に出来るのか、あるいは「出来ない」と主張したことが本当に出来ないのか、そういったことを実証することになるのではないかと思う。たとえば、

  • 真犯人にとって都合の良いファイルスラック領域を作ることは可能か
  • 遠隔操作でC#のコンパイルがうまく出来るのか
  • 素養のない人でもコピペで遠隔操作プログラムが作れるのか

あたりはネタとしてアリだろう。

PS2.

娘の弁によると、ホッテントリになっているらしいw ので、ちょっと追記しておく。

私も、多分他の人も疑問に思う点が、

共犯者の有無

ということだろうと思う。これは佐藤弁護士も「変だよね」と言っていたのだけど、今回の検察のシナリオは

共犯者はいない

という前提になっているそうな(だから捜査は終わっている)。ただし、どこかの愉快犯が勝手に共犯になるとかはありうるので、「長期拘留」ということになったんだという話もある。なので、彼は共犯者で、主犯は別にいて、彼は踏み台を提供した… 的なシナリオは、検察は持っていないらしい。