自覚のない精神論が、ブラック企業を作る元凶

例のバス事故のことで、またブラック企業が叩かれている。まぁ、ブラックはそーゆーものなんだけど。

高速バス事故の事故の責任は、あなたにも私にもあるかもしれない。ブラック企業を生み出す「ブラック消費者」という問題

お説ごもっともで、みんながブラックなものを求めているってのは、まぁ間違いではない。とは言え、この記事の根底にあるものこそ、ブラックの元凶だと言っていい。

消費者は安くていいものを求める。それがブラック企業を生む元凶だ的な言論はそこらじゅうにある。実際そうだろうし。

悔しいことに「ブラック企業」かどうかは、消費者には関係ないのよ

とは言え、そういった風潮がブラック企業を生むのだとゆーのは、

間違ってはいないが、
何の解決の糸口にもならない

消費者は安くて良いものを求める。もっと正確に言えば、コストパフォーマンスを最適化すること、これは、「現代のルール」だ。そこを外れるということは、ゲームの負けを意味する。いくら良いものであっても、余分に金を出してしまうのは、たまに道楽でするには悪くはないが、それはあくまでも

道楽

に過ぎない。「感動したので投げ銭します」というのは、一見ルールから外れているように見えるが、「感動した」というものに対価を払ったというだけだ。「感動」に対価を払えば、払われた方は嬉しいだろうし、払った方も嬉しい。それは「物質的なものが全てではない」ということに経済が発生しただけで、「現代のルール」から外れたわけじゃない。また、当初は「素晴しい」と感動したことであっても、それがルールに組み込まれることにより「当然」になり、それがブラック化の元になるとゆーのは、「感動したサービス」につきまといがちだ。

そんなわけで、「消費者」がコストパフォーマンスを最適化することは、水が低いところに流れるのと同じくらいの必然だ。「水が低きに流れる如く」というのは、嘲りの文脈で使われることが多いのだけど、ここではむしろ

抗えない自然の摂理

的に思ってもらうといい。

ところが件の記事、それこそがブラック化の元だと言っている。それは既に書いたように、観測される事実にとっては正しいのだけど、それを主因とみなして解決を語ることは、何の解決にならない。「お肌の老化」を「時間の経過」を主因とみなして「時間を止めればいい」と言っているのと大差ない。

いや、それが単なる主因の取り違いだけであれば、単なるギャグの一種で笑い飛ばせば良いのであるけど、ここに出て来た解決が

精神論

以上のものになっていないのは、むしろ有害だ。なぜなら、そういった「精神論」的なものが、ブラック化の元凶だからだ。

論理的に難しいこと、リソース的に難しいことを「精神論」で解決を図ろうとする。これこそがブラック化の元凶だ。つまり、気合とか根性とか、そういったものでリソースの不足をカバーしようとするから、ブラック労働になる。機械やプログラムで解決すれば簡単なものを、人力で解決をしようとするから、人力がかかる。まぁ、そんなことは私が一々書くまでもないだろう。

件の記事で解決策とされていることは、

より良いサービスにお金を払う、「適切に支払う」ということは私たちが今日から行動できることです。「安く」でも「高く」でもなく「適切に」です。ほんの少しのトレンドの変化が世の中を変えます。少なくとも今回の高速道路の事故を少しでも「自分事」と受け止めて、少しずつ行動を変えることが、このような悲惨な事故を減らす、遠回りなようで、一番確実な方法です。

のようだけど、それは単なる精神論に過ぎない。「対価を払うべき」とされている「より良いサービス」を全く定義しない上に、「より良いサービス」を提供する方法も提示されていない。つまり、

消費者はもっと金を払え

以上の何物でもない。

世の中の問題の多くは「金」に起因することなんだから、金を払ってもらえば解決することはいっぱいあるのだけど、それは「観測結果」であっても「解決策」ではない。だから、件の記事の主張は精神論以上の何物でもないと結論せざるをえないのだ。

そして、奇しくもそれはブラック化の元凶とされるものと一致している。いや、奇しくもでも何でもなくって、

正しい解決策がない時には精神論に走る

とゆー、全く同じ現象が起きているに過ぎない。

そんなわけで、件の記事のタイトルは、ぐるっと一周して正しいことになるのではあるけど。

PS.

ブコメでチップ云々ってがあったけど、これは別にチップそのものは否定していない。サービスに感動したら、その「感動」に対価を払うことは、何も悪いことじゃない。でも、ここに「日本クオリティ」とか「ブラック」というものが合わさると、チップがチップとしての意味を成さなくなってしまう。ルールに組み込まれてしまって、厄介なことになるのだ。

ヒント: 日本人で確定申告する人は少ない