| 目次 最新 鏡の間トップ 掲示板 |
| 青い空が徐々に橙色に染まってゆく時間が、とても好きだ。そして訪れるのは、燃える日没。屋根ばかりが続く見飽きた景色が、陽光を浴びてまっさらになる。 そしてまた、夜闇が白く割れてゆく時間が好きだ。そして訪れるのは、地平線で膨らんでゆく白い光が生まれ出る瞬間。特にこの季節、冬という季節のそれは、張り詰めた闇が緩む音で鼓膜がいっぱいになる。その瞬間がたまらなくいとおしい。 挫けそうになる時だってある。どうしようもない時だって。それでも、ここを越えればまたやっていける、という確信も、今は、ある。 それでも迷いが生まれる時は。 立ち止まる。立ち止まって、しばし足元を見つめて、ただじっとしている。これ以上自分の傷を増やさないように。周りをも巻き込んでこれ以上傷つけないで済むように。 立ち止まるということを思い出せたことは、私にとって大切な、助けになってくれるだろう。これまでだってそのことを知っていたはずなのに、つい見失ってしまうのだ、気持ちが動転しているときは。 でも、嵐のあとには必ず、凪がやってくる。降りつける雨の後には必ず、眩しいくらいの太陽が昇る。 大丈夫、何度でもしゃがみこんで、休んで、やっていけばいい。別に急ぐ必要はないのだ、私の道なのだから。 |
| 2001.12.2 Sun. |
| 今日、とうとう向日葵を引っこ抜いた。結局、十一芽が出たうちの一つきりしか花は咲かなかった。けれど、確かに黄色い、小さな小さな向日葵が咲いた。向日葵を自分のベランダで眺めるなんて、一体どのくらいぶりのことだっただろう。でももう、秋に向日葵の種を撒くなんてことはやめよう。花を咲かせようと必死に蕾を膨らましているのに、それ以上何処にも進めなくて悲しげな顔をしている向日葵、そんな顔をさせるのはこの一度きりでいい。向日葵よ、一輪でも咲いてくれてありがとう。 鍋にミルクを入れて、そこに紅茶の葉を落とし、くつくつと煮出すとき、私は魔法を見るような気持ちになる。葉がゆっくりと開いて、それにしたがって白いミルクが色づき始める。秋の公園の、樹の葉が少しずつ色づいてゆくように、ゆっくりと白が色づく。 そういえば、どうして人は、白を白と名づけたのだろう。あの色を白としないで他にどんな名前があり得ただろう。鍋の中、色づいていくミルクを見ながら、そんなことをふと思った。 |
| 2001.12.4 Tue. |
| 寝つきの悪い娘を寝かしつけているうちに、三人とも寝てしまったらしく。眠りの浅い私だけが半端な時間に目覚めてしまったので、これは、久々に不良女になるべく、梅酒をコップ一杯につぐ。ごくり。いやぁ懐かしいなぁアルコール。っていったって梅酒だけど。 酔っ払いの戯言としてつらつらと。 自分からはじめた五百字だけども、思ったより続いてるよなぁ。このまま百くらいまで、本当は五百までいければちょうどキリもいいのだろうけれど。まぁそりゃ無理だろう。どっちにしても、細々と、無理のない程度に続けていけたらいい。それにつきる嬉しさはない。 夕飯に天麩羅を作る。天麩羅の定番は、春菊、それから玉葱、しいたけ。私個人としては青ジソとまいたけとかぼちゃもほしいところだが、いい年こいた大人ふたりが食べる量はたかが知れており。今日もだから、春菊と玉葱としいたけのみでまかなう。天麩羅というのは楽なのだ。細かな味付けをしなくてすむし。それをいうと、水炊きも便利。出しさえちゃんととれば、あとはいかようにもなるし。料理音痴味音痴の私にとてはお助けメニューとなる。で、何故料理音痴味音痴?音痴って音感のこと言うんでしょ? まぁいいか。そんなことは。 よっぱらいついでに。 電話がかかってくる。 昔、恋愛のドツボにはまった相手から。 何でここの電話番号が分かったのだろうと不思議に思ったが、とりあえず「元気?」と言ってみる。一応挨拶のつもり。「いやぁ相変わらず」と口を濁す相手。で、結局、君、何しに電話かけてきたのさ、と酔った勢いでききそうになってやめた。これほどの愚問はなかろうと気づいて。もう決して並んで歩いたりなぞしない相手に、それでも電話をかけてくるときというのは、たいがいにして、日常に飽きているか、ちょっとその日常から逃避行してみたいかのどちらかだったりするもの。と気づいて、めいっぱい今の私の幸せさ加減(爆笑)をアピールすることにした。「そんなに幸せにやってるのか。じゃぁ安心した。またいつか飲もうぜ」。電話を切ってくれた相手に、半分申し訳なさを、半分ほっとする何かを抱え、受話器をさっさと戻す。 今もどこかで後ろ髪をひかれる相手は、私にもいる。でもだから、会わないでいたいと思う。私は結構、ふらふら、よたよたしがちなので、自分の生活をそれで脱線させかねないからだ。ああだらしない私。 ってか、最近は、そういう寄り道に時間使うくらいなら、自分にたっぷり時間を費やしてやる方が面白いということに気づいたもんで。 どんどん人付き合いが悪くなっているような気配がなきにしもあらず。まぁいいのですけど。 本当に必要な相手との時間は、どんなに無理をしても作りたいと思う。けど、そうじゃないのなら、できうる限り、自分自身に時間を使いたい。 おたがいぼちぼちやっているなら、それでいいさ。 縁があるなら、その時会うさ。 そんなスタンスで、今後もいこう。 あぁ久しぶりの酒は、回るのが早い。ふぅぅ。 ふと思い出した、今朝の青空。 雲間から降り下りてくる光を溶かしてしまうほどの青をたたえ、遥か彼方の高みに広がるその色。今思い出してもすがすがしさが身体中に蘇る。 明日も晴れるという。どんな空が見られるのだろう。 |
| 2001.12.8 Sat. |
| --- 以下、「岸田劉生 内なる美(ニ玄社)」より引用 外界にぶつかって、ほんとに血を流せる人は又必然に、自己の内にぶつかる事ができるのだ。そして倶に、そこには、人間らしい血が流されて行くのだ。生活の創造という事もこの二つ以外には出来やしない。 自分は自然と如何なる意味においてでも合奏する時のみ人間的になり得る。そして自分が人間であれば人間である程、自分は自然と合奏して居る。かくて自分は生活を離れて自然を讃美したくない。自分は心だけを自然と合奏させたくない。この身体ごと自然と合奏したい。 この頃、道を見ると、その力に驚いたものだ。地軸から上へと押し上げている様な力が、人の足に踏まれ踏まれて堅くなった道の面に充ちているのを感じた。 僕が細かにものを描くのは僕が独りでものを見るからだ。 表現は見る事を深くさせ、見る事は又表現を深くさせる。 --- 以上、「岸田劉生 内なる美(ニ玄社)」より引用 |
| 2001.12.9 Sun. |
| 冬の雨はしめやかに。そして眩しいほどの晴れ間を連れてくる。 今日も気がつけば、西に大きく傾いた日は真ん丸く橙色に燃えながら、さりげなく地平線にくちづけをして、ふわりと沈んでゆくのだ。 ■ 付録:冬の雨の日に |
| 2001.12.14 Fri. |
| 久しぶりに電話をした友達が、あれからもう三年も経っているんだよと言ったその言葉に、立ち竦む。三年、もう三年も経つのか。それは娘が生まれる前のことであり、私が仕事を辞めた頃でもあり、それはもう、散々な状態の頃だった。 あの頃は、時が経てばなどという友人たちの言葉に、傾けられる耳を私は持たなかった。何が時が経てばなんだと反発するばかりだった。 でも今は、何となく感じる。 抗おうと何をしようと、時は流れゆく。時に逆らって立ち止まることは、生と死を持つ私たちには不可能なことだ。私などという個人を呑み込んでもあまりあるほどの深さでもって流れるこの川。私はその川の中で、浮かぶ一欠けらの水草だ。 今日も私は、流れてゆく。でもそれは決して、流されてゆくのではない。流れてゆくのだ。 |
| 2001.12.17 Mon. |
| ■カレーライスを作った。夫が、最近カレーもおいしくなったよね、と言う。それで終わればよかったのだけれど、続けて夫が言う。ルゥ変えたの? ...どうせ私は料理が下手です、下手ですけど、でも、ルゥは変えてないです。ずっとおんなじです。嘘でいいから、味付けがちょっとうまくなったねって言ってよ。 ■娘が夜中に何度も泣いて起きます。火がついたように毎晩泣きます。こりゃウズキュウメイガンを使わねば、と思ったのですが、以前使ったとき、全然効果ありませんでした。ウズキュウメイガンが効かないときは、はてさて、どうしたらよいのでしょう。 ■大好きなオレンジスパイスティのティバックが切れたので買い足しに出掛けたのですけど。もう仕入れる予定がありませんと店員さんに言われてしまいました。あぁどうしよう。もう飲むことができないのだろうか。いとしいいとしいオレンジスパイスティよ。 ■ミニストップのソフトクリームのあずき味。おいしいです。毎日食べたい。配達してくれないもんだろうか、あずき味のソフトクリーム。 ■近くの公園のベンチにずっと住みついているおじさんがいて。ダンボールも何も持たないまま、ベンチにいつも寝っころがっているのですけど。おじさん、寒くないですか。見ている私は寒いです。 ■爪研ぎにまたたびの粉末をふりかけてやったら、猫がもう大変なことになっています。爪研ぎの前で二匹してのたうちまわって。君たち大丈夫って声をかけたくなります。それほど欲求不満が溜まっていたということでしょうか。うーん。 ■あぁ、もう、おなかのなかがホット梅酒でたぽたぽです。 |
| 2001.12.19 Wed. |
| ■娘は帽子が好きで。部屋の中でも帽子を被ったりとったり忙しそうです。そして極めつけは、「お出かけスタイル」。といっても実際出かけるときにそういう格好をするわけじゃなくって。ただ私がそう名づけただけなんですけど。家の中でふとしたとき彼女がしたがる格好があって。それは、ベージュ色の帽子をかぶり、薄紫色の袖なしの上着を着、その上に最後、ばぁばからもらったきりんさんのリュックを背負うという格好で。その格好をすると、バイバイと言って猫や私に手を振って、家の中を歩いていたりして。 ■友達が、フリースのブランケットと珈琲とサーモンを送ってくれました。虹色のフリース。早速娘がそれを引きずりまわし、最後、トトロとプーさんの人形にブランケットをかけて、とんとんと叩いています。多分あの仕草から見ると、彼女は、トトロとプーさんを寝かしつけているつもりになっているんだと思います。毎晩どれほど長いこと背中をとんとん叩いても、横になっては、今だ自分で眠れない娘よ、さて、今晩は自力で眠れるかな?(→やっぱり眠れず。抱っこしないとだめだった。残念) ■それにしても、突然舞い降りてきたこの贈り物は、まるで天の助けのようです。お金がないねぇと話しながら、珈琲も切れちゃったねぇ、と、夫と二人、昨夜話していたばかりで。その翌日、こんな贈り物が届くとは。早速夫が一杯、珈琲をいれてくれました。なんだかとってもあったまります。 ■口の中を大きく切って、そこを糸で縫ったりしたので、今、口の中は血だらけです。血の味というのは何というかこう、要するに好きになれません。吸血鬼ってすごいな、なんて、思ったりして。 |
| 2001.12.19 Wed. |
| ■明日はみっちゃんちに遊びに行きます。なんと、夫と娘を残して遊びにゆく妻です。きゃぁ一度やってみたかった! でも一度やったら癖になりそうで、なかなか踏ん切りがつかなかったのですけど、いいんです、どうせ不良妻です、不良母です、遊びに行って来ます。泊まりにいって、べたべたな写真を撮ります。でも、べたべたってどういう写真だろう、よく分からないけれど、でも、べたべたに撮ってみたいな、と。とりあえず今の気持ちはべたべたで。あとは、みっちゃんと会った時の、わたしたちふたりのテンション次第でしょうか。こういう時間がいちばん楽しい。会いたい人と会う前の、どきどき。 ■そう、今日はどきどきの日でした。私は最近殆ど他人と喋っておりません。あまり喋る必要を感じなかったから。でも今日は、自分から彼女に声をかけていました。彼女が自分ひとりの時間を楽しんでらっしゃる最中かもしれないと思いながら。 話したいと思える相手と話しができるという幸福。それは、シナモンミルクティにお砂糖を一匙落として飲む時のような、ちょっと甘くて切なくて、そして満たされた時間です。 電話を切った後、なんだか背筋を伸ばしたくなってベランダに出ました。穏やかな陽射の中、背伸びをしながら深呼吸を。贅沢なひとときを味わえた午後。あぁほんとに贅沢。思わずプランターの中の薔薇に、液肥を足してやったりして。私のこの充足感を誰かにお裾分けしたい気分だったので。 ■考えてみると、もうじき結婚記念日、いや、入籍記念日だったっけかな、と。入籍してから数年しか経っていないはずなのですが、もう十年二十年経っているようなこの錯覚。うぅむ。おかしな感じです。 ■そうそう、明日は雪が降るとか。本当でしょうか。横浜に雪が? こんな時期に? 今日、友人と話しをした時、横浜はまだまだ緑があるよと話していたばかりです。二月にならないと雪は降らないんじゃないかなぁと話していたばかりなのです。噂話をしていたから気を利かせて降ってこようというのでしょうか。天気予報によると、明日の午後70パーセントの確率で降るそうで。楽しみなんですけど、とっても楽しみなんですが。でも、一つ困ったことが。みっちゃんのうちは今、エアコンが壊れているそうで。二人でカイロでも揉み揉みして過ごさなければならないという具合。それなのに雪。大丈夫でしょうか。心配だけれど、やっぱり楽しみでもあり。 雪とはそれなりに馴染みが深いのです。子供の頃、毎年雪の中で過ごしていました。長野の上の方のとある町で。一面真っ白な、目を開けていられないほどの眩さ。吹雪いて一寸先も見えなくなる轟々唸る雪の音、思い出すと懐かしいです。娘がもう少し大きくなったら、連れていってやりたい。 |
| 2001.12.20 Thu. |
| ■私とその家族のことを良く知る知人が、仰天するようなことを言ってくれました。 「きっとあぁこは前世でパパと恋人同士だったのよ、で、その間に生まれた子供がさをりってとこね。」 おいおい、ちょっと待ってくれ、前世で夫と娘が恋人同士だか夫婦だかで、私がその間に生まれた子供だってか? わぁすごい。 だから娘に言ってあげました、「ちょっとちょっと、前世の妻、現世では私がパパの妻ですからね」。もちろん娘はぶんぶんと首を振り。パパにしがみついて私を振り向きにかっと笑うわけで。 何ともまぁ複雑な気分になる私です。 ■午前五時近くまで写真をバシャバシャ、煙草をぷかぷか、毒舌をマシンガンの如く撒き散らし、私たちはそうした一夜を過ごした。過ぎてみるとあまりにあっという間で、あまりにあっけなく過ぎてしまって。なんだかちょっと名残惜しいような。 でも同時に、娘と旦那に心の中で、ありがたやありがたやと唱えている自分もおり。こうして自分がしたいことを少しずつでもやっていけるという環境に自分があることに、深く深く感謝する。 ■雪が降ると言っていた昨日、結局雪は降らず。でも、みっちゃんの家に遊びに行って、私はそこで、この冬初めての雪を見た。うっすらと車の上や茂みに積もった雪は、ほのあかるくて、なんだかあたたかそうにさえ見えた。 ■ところで。喫煙OKのみっちゃんの部屋、というか私よりずっとたくさん煙草を吸うみっちゃんにつられて、いつもの倍くらい煙草をぷかぷか吸いまくっていた昨夜、みっちゃんの部屋を出たところで、私はあまりの自分の身体の煙草臭さに唖然とし。思わず駅前のスーパーで香り物を買ってしまいました。そして心の中で思ったわけです。匂いが気になるくらいなら吸うのやめりゃいいのにな、と。でもやっぱり、煙草はおいしい。読書と煙草、日記帳と煙草、海と煙草、写真と煙草…あぁ何といとおしい関係。 |
| 2001.12.22 Sat. |
| ■こんなときは、しっかりしろ、と自分に言いたくなる。しっかりしろ、一歩踏み出してしまえば何ともないさ、あとはやるだけなのだから、と。 ■味のわからない夕食をおなかに積め込み、身体だけは動かしていられるように、おなかに積め込み。その後には、ミルクをたっぷり入れた珈琲を飲む。珍しくお砂糖もほんの少し入れて。掻き回したスプーンに滴る褐色をぼんやりと眺めながら、ほんの束の間、爪先立ちしてみる。明日は来る。必ず来る。 ■私が失うものと、私が得るものと、秤にかけて。でもそこから先が分からない。 ■迷う夜はただひとりになりたい。迷う夜はそのまま迷子でいたい。誰にも見つけてもらえないかくれんぼの時のように、膝を抱えて闇に隠れて。ただじっと。 ■張り裂けそうになる心臓は、ただ一声だけでも張り上げたくて。ここでは潮騒も聞こえないから。砂浜を持たない街。私が住む街。 ■見つめる夜はただ、漠々と広がっている。月も姿を消した夜。 |
| 2001.12.26 Wed. |
| ■振り返ってみると、現実的な変化が多い年でした。現実的な変化って何だ、えっと、要するに、心境の変化とかそういうのとまた違う、現実としてたとえば環境の状況が変わるとか、そういうことで。あまりに変化が多くて心がついていけないときもありました。 ■でもなんでしょう、そういうとき、友達が声をかけてくれたりして。要所要所で、必ず友達の声がするんですね。これはきっと、何よりの贅沢というか、幸せというか。私って恵まれてるんだなぁって、私の周りにいてくれる数少ない友達に、心から感謝する次第。 ■突然ですが。うちの娘にお古着を譲ってくださるという方、いらっしゃいませんか。うちの娘は現在85センチ13キロです。もうこの子供服いらないわぁっていうことがあったら、ぜひ譲ってください。今着るには大きくてもいいです。譲ってもらえると嬉しいです。そういう方がいらっしゃったら、メールください。 ■いろいろあったけれど、それでも、こうやって過ごしていられることは、それだけで幸せなことなんだよな、と、思う、今日この頃。 ■今年一年、お世話になりました。今年もあと数日。よいお年をお迎え下さい。そして、よろしかったら…来年もどうぞよろしくお願いします。 |
| 2001.12.29 Sat. |
| 目次 最新 鏡の間トップ 掲示板 |
| Copyright(c)2001 Saori NINOMIYA. |