いじらしいコウちゃん

 

油蝙蝠 平成9年8月1日、夕方、うちに前の廊下に、枯れ葉のようなかえるのような何かが落ちていた。かえるなら恐くないので、手のひらに載せてみた。キャキャっと啼きながら歯をむいている小さな小さな蝙蝠だった。動物百科事典を立ち読みして調べたら、あぶら蝙蝠という名前だと分かった。あぶら蝙蝠は、夕方から行動を開始し、田んぼの上などを飛び回って、小さな羽虫を捕まえて食べる、普通の民家に棲んでいたりする身近な蝙蝠で、毎年6月に子どもを産み、子どもは1ヶ月半から2ヶ月で巣立ち、10月頃に交尾をし、10何羽かの家族で寄り添って寒さをしのぎながら冬を越し、だいたい5年くらいの寿命と書いてあった。さて、どうしようと、困ってしまってワンワンワワン、ワンワンワワン。羽虫なんて捕まえられない。人間は思い余って猫の餌(モンプチ)を与えてみた。すると、小指の先ほどの固まりを、おいしそうにペロリと食べた。水も下に降りて、ひらひらしているかわいい小さい舌でペロペロ飲んでいる。廊下に落ちていたのは、皮膜がぼろぼろに破れていて飛べないからだった。蝙蝠を手のひらに載せて、じっくり見たことのある人はあまりいないと思うけど、とてもかわいい顔をしていて、つぶらな瞳、顔の大きさに比べて大きな耳、小さくて白い綺麗に並んだ尖った歯、ひらひらと小さい先の尖った舌、ぎゅっと掴むととても強い後ろ足、指は5本、爪もあり、前足は、何かにつかまりながら上に登ったりするのに、便利なように鉤型をしている。頭から尾まで、5cmくらいで、皮膜全部を広げても、片手にすっぽり収まるかわいらしさだ。皮膜はとても薄くてこげ茶色、体もこげ茶色で、茶色の産毛が生えている。かわいいコウちゃんは、10月4日死んでしまい、2ヶ月ほどしかうちに居なかったけど、あぶら蝙蝠のコウちゃんと過ごした貴重な日々は、何物にも代え難いすばらしい出来事でした。


最近貰った愉快な《メール》仲間の方のうちにも、ある日玄関にコウモリさんが居たそうです。夜になるとどこかに行ってしまっていて、朝になると帰って来ていたそうです。冬に見なくなったそうですが、きっと家族と冬眠したのでしょう。コウモリというとアルゼンチンなど、南米に生息する、家畜の首筋に噛み付いて生き血をすする吸血蝙蝠や、ドラキュラ伯爵の使い魔のイメージが強いと思われますが、あぶらコウモリは、とても可愛い顔をした、夕方田んぼの上を飛び回って羽虫などを食べているコウモリです。イソップ物語は寓話なので、コウモリ野郎という言葉と、あぶらコウモリを混同しないであげて下さいね。


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