I Want It





バシッ

テニスボールを思いっきり投げつけた。
壁に当たって、転がっていくボールを見ながら、
地面に座り込む。

「機嫌、悪そうだね。」

ボールを拾い、笑いながら不二が近づいてきた。
手塚はうつむいたまま、つぶやく。

「・・・・悪くなるに決まっているだろう。」

自分にとって、青学にとって大事な試合が目前だった。

それなのに。

自分の利き腕が、テニスをする腕が、
痛みのせいで上手く動かない。

天才と言われる、自分なのに。

「オレからテニスを取れば、何が残る?」

完璧なテニスをしなければ。
みんなが期待し、恐れているテニスを。

「別にいいんじゃない?今の君でも。」

さぁっと吹く風に気持ちよさそうに髪の毛を
なびかせながら、不二はこともなげにそう言った。

「今の青学には、越前くんも桃も海堂もいるから。
それに、僕も。」

ふわりと不二は、手塚の髪の毛をかき上げた。

「もっと僕に頼ってよ。」

「・・・オレはただ、求められているものを
裏切りたくないだけだ・・・」

完璧なテニス以外、自分に求められてないはずだから。

不二はふいに手塚の顔をもちあげて、唇を重ねた。

そんな考えが消し飛ぶように。
自分の気持ちが伝わるように
深く、長く。

「僕は君に完璧なんて求めてないよ。
完璧じゃない方が頼ってくれるしね。
・・・・・それに・・・・」

僕が求めているのは、君の心、だから。

耳元でそう、いたずらっぽく囁いた。


 


【光琉(本人コメント)】
 煮るなり焼くなりお好きにどうぞv

【紅葉(管理人)コメント】
 煮て焼いてサイトに載っけましたvvvvv
 相変わらず推敲された文章でステキですわね。うちみたいなババッと
 30分くらいで適当に打ちながら考える文とは大違いvvv(墓穴)
 うちのサイト初の不二塚っすね。(驚)