「ねぇねぇ見て見て〜〜〜」

弾むような声で、甲板に出るなりそう言って、皆の反応を待つ。

「ナミさんっ!!なんて可愛らしいんだ〜〜〜〜vvv」

「おーナミ!それなんだー?」

「これねー、東にある島国の服なのよ。」

「初めて見たぞ?そんな服。」

「その国でしか着ない『制服』なんだけどね、ちょっとある店で見つけたのよv」

「制服?そんなヒラヒラの?なんか水兵さんみたいだぞ。」

「そーゆー作りなのよ!!」

「ナミさんはなんでも似合いますねvvv」

「あらそう?ありがと。」

サンジの褒め言葉をさらりとかわし、ズカズカと甲板の端にガーガーとイビキをたてながら
昼寝をしている未来の大剣豪に近寄った。

「ねぇ!ゾロ!!起きなさいよ!!」

そんな甘っちょろい起こし方で起きるほど、浅い眠りではない。しかし、女心としては
折角自分のお気に入りの服を着ているんだったら、好きな人に見てもらいたい。
それなのに・・・

「おーきーろっ!!!(バキッ)」

短いスカートの中から一瞬にして護身用の棍棒を取り出し、脳天を勝ち割るかのような
勢いで殴る。鈍い音がした。

「んぁ・・・???」

「ねぇ、コレ、どう??」

「・・・・・・・・・・・・?」

「この服どうかって聞いてんの!!」

寝ぼけたままのゾロは、焦点の合わない目つきでぼーっとナミを見つめる。
顔が赤くなる寸前でどうにか平静を取り戻して、ぐっと見据える。

「なんだコレ・・・」

やっと口を開いたかと思えば、イキナリ制服の赤いリボンに手をかけ、するりとほどく。
その仕草に性的なニュアンスを感じて・・・

「やっ・・・ちょっと!せっかく可愛く結んだのに!!」

ヒュゥッ・・・

甲板に潮風が吹きつける。うかつだった。ゾロが持っていた赤いスカーフはフワリと
風に乗って飛ばされた。

「あっ!!」

思わず柵に手を掛けるのを忘れて、スカーフを取ろうとした。はしっ!と掴んだ瞬間、
グラリと視界が歪む。

「危ねェッ・・・・!!!」

半分が落ちかけているナミを捕まえようとして、自分も身をのりだしてしまった。
同じように視界が180度回転し、そのまま柵の外へ落ちてしまった。

ザッパーーーーーン

「ゾローーー!!!!!!ナミーーーーー!!!!」

血相を変えた船長、ルフィは叫ぶ。言うが早いか、ゴーイングメリー号専属コックのサンジが
靴と上着を脱ぎ捨て、海へ助けに行った。

ルフィは船の上から3人が浮かんでくるのをじっと待った。自分の能力の代償が
とても重くのしかかる。自分の仲間さえ助けられないなんて・・・・

「プハッ!」
「っはぁっ!!」
「・・・プハッ」

3人が同時に顔を出した。どうやら間に合ったらしい。ルフィはすぐに救助用ハシゴを下に降ろした。
少しぐったりとしたナミをゾロが抱えて上ってくる。

「大丈夫か?!」
「あァ。」
「気を失ってるだけだ・・・」
「ゾロ!!!!」
「何だ。」
「責任とってゾロが看病しろ!」
「な・・・?!」
「船長命令だ!!」
「それなら俺が・・・」
「ダメだ!ゾロがしなきゃダメだ!!」

そんなこんなで看病などしたことがないゾロが、ナミの看病をすることになった。
とはいっても、海に落ちて気を失っているだけなので、看病も何もないが・・・
とりあえずナミを部屋へと運んだ。


「・・・・・・・・・・ベットに寝かせればいいのか?」

独り言疑問系で自身に問う。しかしビショ濡れのまま寝かせても体に良くないというか
むしろ風邪を引くにちがいないので、着替えさせる事にした。

「・・・服・・・」

適当な服が見当たらなかった。しばらく考え込んでひらめいたのはバスローブ。
確か浴室から出たところにナミ専用のが掛けてあったハズ・・・。

「よし。」

手にとって確認すると、服を脱がせにかかる。その気はなくても水に濡れて透けた
セーラー服はなんとも言いがたい色気を放っていて、ムラムラとくるのは男の悲しい性であった。
なるべく見ないように服を脱がせたいのだが、その服の構造がわからず、モタついている間にナミが
意識を取り戻し始めた。

「ん・・・・」

ギクゥッ!!

別にやましいことはなにもないのだが、やはりこの状況で誤解するなという方が無理な注文である。

「ゾ・・・ロ・・・・・・?」
「・・・・・・」
「なにやって・・・・・・・って何でアンタが私の服脱がせてんのよ!!!」

怒りマークを額に浮かばせながら思いっきり拳を振り下ろすナミ・・・。

「海に落ちて・・・そのままだと・・・だから脱がせ・・・・」
「言い訳無用!!!!」

その後、大きな誤解を受けながらナミの渾身の攻撃に耐え、涙を流したのは言うまでもない・・・―――