美食家の涙☆☆☆大和 明




「…なんだこりゃ」
そこには色といいツヤといい、なんとも美味しそうな実が転がっていた。
「ゼリーにしたら旨そうだなvv」
顔を近づけると恐ろしいほどの甘い香りがした。
甘酸っぱいが、熟れた果実の香り。
指先で傷付けないようにそっとなでると、キュ、と小さいが良い音がした。
なんとも言えぬ、食欲と、料理人魂をくすぐるこの食材。
しかし……
「アヤしいな」
そう、それは見るからにあやしかったのである。
「けど…」
光を受けてその赤い果実がキラリと光った。
「っ!!」
据膳作らぬは男の恥とは良く言ったものだ。(言ってない)
サンジはその果物を懐にしまい、厨房へと猛ダッシュしたのであった。





「すげぇ…こりゃ俺の最高傑作だな」
自分でもほれぼれするほどの謎のゼリー。
「名づけて『ミステリアスvゼリー』だ!!!」
まんまだった。

「さて、味の方は、っと」
スプーンで掬って口へそっと入れる。
「……クソうめぇ!!!!ジジィに食わしたら腰抜かすぜこりゃ!!
そーだ!ナミさんとビビちゃんに食べて貰おう!」

サンジは2人前のゼリーを器に写し、皆のいる甲板へと急いだ。

「ナミさ〜〜んvvビビちゃ〜んvvちょっとこれ食べて下さい!
オールブルーに行く前に最高傑作が出来ちゃいました〜vvえへっvv」
「ちょっとサンジ君!」
「はい??」
「どうしたの…・それ」
「え、だからこれは俺の最高傑作ミステリア・・」
「そうじゃなくて!!!」
バッ!!
「うっ…・わぁ!!ナミさんいきなり何するんですか!!?
こーゆーのは二人っきりのときに…・・」
「きゃあーーーーーーーーー!!」
それまで黙っていたビビが悲鳴をあげた。
「はぁー…・」
ナミが心底から出したであろう溜め息をついた。
「え…?え…・?」
サンジは一人状況が飲み込めないままでいる。

「あーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
そこへルフィとウソップ、そしてゾロがやってきた。
「サンジおめぇ、女だったのか!??」
「は!??ルフィ何言ってんだ??」
「おおお…・・おおおおお…女だ!!」
「ウソップ??何事だ一体!!」
「…・・」
ゾロが自分の身体を見つめていることに気付き、自分も視線をそこへやる。
そこには今までにないかすかな膨らみが見えた。
恐る恐る手を触れてみる。柔かい。

「……っぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

心なしかいつもよりも高い、サンジの声が海原へ響き渡った。



「で、床に落ちてる実を食べたらこうなっちゃった、と」
「どうしましょうぅ〜ナミさんん〜〜」
「はいはい。泣かないの。」
ここはビビの部屋。
男三人はもとは男といえ女体を見てはいけないということで隔離されていた。
「サンジさん。服…これでいいかしら??」
洋服ダンスを探し回っていたビビが声をかけた。
「あ…ありがとう。」
そこにはピンク色をした可愛いワンピースがあった。
派手、というわけでは無いが、袖と裾のあたりには白いフリルが施されていた。
ノースリーブで胸の大きくあいた、夏とは言え中々な露出の服である。
「他のは…・」
「「ないの!!」」
ビビとナミが声を揃え、笑顔で答えた。
「ナミさんの服は…・」
「それじゃ胸があきすぎるわよ。サンジ君はどっちかとゆーとビビの体系よね」
「そ…そうよね(涙)」
身長も縮まったのかいつものスーツはぶかぶかで着れたものではない。
裸でいるわけにもいかないので、サンジはそのフリフリvvワンピースに手を伸ばし
た。
「っと、ちょっと待って!」
「え??他のがあったんですか!??」
「そんなもんないわよ。それより…・これっ!」
「…・・これ??」
そこにはこれはまたピンクの女性用下着が上下であった。
「自分でできるわよね?私達外で待ってるから」
「は…・・はい」
二人の勢いに押され、サンジは素直にうなずくのであった。


「本当に…・・オレ女になっちまったんだなぁ」
下を向くと嫌でも目に入る胸の膨らみに大きく溜め息をついた。
「え〜〜っと。ここから腕を通して…・ホックを…・」
普段相手の女性にするときにはスムーズなのに自分だと上手く行かない。
しょうがないので諦めることにした。
「ま、大丈夫だろ」
ワンピースに取り掛かる。
背中のファスナーの変りに、前面にリボンがついていてそこをを外して着用するタ
イプだった。
「こりゃあ着るの大変だな…・」
クソ面倒くせぇ・・と思いつつも身につける。
「ふぅーーーーっ、完了!」
まわりの反応に不安を抱きながらも、サンジは甲板へ出た。


「うっわぁーーーーーー!サンジ君かっわいい〜〜VV 」
「良かった!私が見立てた通りだわ!」
「え…・見立てた、ってさっきこれしかないって…」
「おおーーーーーーーーー!!サンジすげぇーーーーー!!!」
「本当に女になっちまったんだな!!」
かわるがわる浴びせられる声から逃れ、サンジはゾロの姿が見当たらないことにき
づいた。
「あれ…・?ゾロは??」
「部屋で寝るってさ」
「ふーーーん」
一番反応を知りたい相手がいないことにサンジはほっとしたような、不安なような
気持ちになった。

「しょうがねぇ、後でアイツの部屋尋ねるとするか」



★終★



はいっ!実はこのお話こんなに短いものだったんです!!
ってわけでこの話は終了〜♪
ちなみに挿し絵も一枚描いてたりして(^w^)♪