明るかった部屋の電気を消して、アイツはこう言った。
「夜はね、ボクの時間なんだよ」
その時はその言葉が何を意味するのか解からなかった。
だって、平日は夜10時に寝、朝は6時起きが身についている不二。
夜更かししてるオレの方がよっぽど「夜はオレの時間」だと思った。
泊まりに行く時泊まりに来る時、いつも先に不二の方が眠くなっちゃって。
本人曰く「ボクって低血圧だから早く寝ないと朝酷いんだよね」。
その言葉を無視して、ずーっと二人で起きてた時があったけど・・・・・・。
夜が明ける前に不二はダウンしちゃって、その日の朝は不二が言ったとうり、とても辛そうだった。
頭脳明晰な不二が、トンチンカンなことばっかり言っててかなり面白かったっけ?
どうやら低血圧は頭の働きまで悪くするらしい。
ここでもやはり、オレの方が夜向きだと思った。
でも、最近解かった気がする。
「夜はね、ボクの時間なんだよ」
薄暗い部屋の中でそう言った。
*****闇
お盆前の部活も無い連休。菊丸は不二の家に泊まりに行った。
夕御飯を不二の家族と食べて、お風呂に入り、不二の部屋でひとしきり遊んだ。
時計は十時を指そうとしている。
そろそろ不二が眠くなる時間かな、なんて菊丸が思った頃、案の定不二は眠たそうに目をごしごし擦っていた。
「そろそろ寝る?」
「ん・・・・・」
半ば意識の無い状態で、うん、とだけ頷く不二。
きっと誰も知らない。幼馴染の手塚も乾も、こんな不二を知らない。
学校でも部活でも、こんな不二は見たことが無い。
こんな隙だらけで無防備な不二は。
「電気消すよ」
「うん・・・・・・・・ごめん」
「いいって」
オレが電気を消すことに対してじゃなくて、起きていたいオレを寝かせてしまうことに対しての「ごめん」だと言うことに、気付き始めたのは何時だっただろう。
真昼のように明るかった部屋に夜が訪れた。
夜は不二の時間。
うとうとしている不二にタオルケットをかぶせてやって、オレもその隣に潜り込んだ。
こうすると、昼と夜では全く逆の立場。夜はオレの方が優位に立ってる感じ。オレの方がオトナって感じ。
・・・・・・・・・・・チガウ。
不二が子供になったんだ。
夜行性なオレはまだ眠くなくて、不二の寝顔を見ていた。
横になっている所為で顔にかかっている髪をそっとどけてやると、不二は薄く目を開けた。目を覚ますのが珍しくて、意識はあるんだろうか、何て思ってるとうっすら笑ってこう言った。
「夜はね、ボクの時間なんだよ・・・・・・・・」
昼間は茶色い瞳が、薄暗い所為か金色がかかって見えた。
「こんなに早くに寝ちゃうのに?」
ちょっとからかって言うと、思わぬ答えが返ってきた。
「夜が、闇が呼んでるんだよ・・・・ボクは闇夜に浮かんでるんだ」
意識があるのか無いのか解からない声で、でも妙にはっきりした声で不二は言った。
言っている意味は解からなかったけれど、なぜかオレは納得してしまった。
嗚呼、夜が不二を連れて行くんだね。
「・・・・・・だいじょうぶだよ。空の上から見てるから。エージは明るいから見つけ易いんだ」
言いたいことを察したのか、不二は微笑んで目を閉じた。
何も言えなかった。
暫らくすると規則正しい寝息が聞こえてきた。
きっと今頃不二は月の無い闇夜に浮かんでいるんだろう。独りで。
でも多分、闇が不二を支配するんじゃなくて、きっと、その逆。
夜は不二の時間だから。
いつか不二が闇に溶け込んでしまわないように、祈りながらオレも目を閉じた。
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意味不明ですか、そうです、そのとうりです。(オイ)
目茶色い人は暗いところで見るとホントに金色かかって見えるんですよ。(私がそう)
「月光の彼方に浮かれて巻かれていたっけ
それでも今は前へと進もう
突然例え独りぼっちになってしまっても
街を見下ろし笑う魔法使いと青い鳥
幻想の花を投げた 深紅の空に 祈りを胸に」
Hello Another Way 〜それぞれの場所〜からの引用です。
最近はまってまして・・・・私的にメイツ(先輩視点)ソングかと(笑)←でも本気
先輩にマッチング!!と思って書きました。
この歌詞の部分を主に書きました。
解釈させてもらいますと、先輩は闇に巻かれながら菊丸君を探すわけです。
菊丸君は明るいので(性格とかじゃなくて、何てゆうか、明るいんですよ・・・)見つけやすいのです。
菊丸君を陽に例えて、先輩を陰に例えたイメイジです。
菊丸君は先輩の居る所にはいけないし、先輩は菊丸君の居るところには行けないのです。
でもお互い見てるんですよ!!!!(何でこんなに力説してるんだろう・・・)←理由、メイツだから。(納得)
あと、なんとなく先輩ってよく寝そうだな・・・・って思いました。
あ・・・・途中から菊丸君視点になってる(気付きませんでした/阿呆)