「いくら持ってる?」
「100円」
「オレは150円!」

お互いにポケットの中を探って所持金を漁った。






 サマー






今日は暑い。とにかく暑い。朝から30度を越す程、夏は深まってきている。
蝉の声もする。



 ・ ・













「不二ー。来たよー」

何とはなしに、オレは不二に会いに行った。



  ・ 



こんにちわー、と言うだけで侵入を許される不二家。由美子さんの声を合図に、いつものようにたいした遠慮感もなく不二の部屋に向かった。

きっと此処は第二の自分の家。


不二の部屋の戸を開けると、涼しい風が出迎えてくれた。クーラーとかの機械的な寒さではなくて、それは自然のもの。
窓を開けるだけで、不二の部屋はいつも涼しくなる。

大抵、どんなに中のいい奴でも、他人の部屋は落ち着かないものだ。気ままにできないし、のんびりしにくい。
でも此処はちがう。

きっと此処は第二のオレの部屋。

勝手にそう決め付けて、ベットに寝転んで本を読んでいる不二に一言。

「不二ー。来たよー」

そういうと、(起きてる時は)決まってこう言うんだ。

「来ると思った」

パタンと読みかけの本を閉じて、オレの方に向きなおす。
現在朝の十時。
今日は部活も無いから、こんな時間に不二の意識があるってちょっと珍しい。
この時間帯に来ると大体寝てるもんね、コイツ。
平日八時間、休日十五時間睡眠(部活が無い時のみ)をモットーにしてるなんてきっとオレ以外知らないんだろうな。
だって傍目じゃわかんないもん。一種の詐欺だよね、詐欺。

「今日はエージが来るような気がしてたんだよね。」
「だから今日は起きるのこんなに早いの?」
「うん」

頷いて、ベットから立ち上がってオレの手を取って今来た道をスタスタ降りていった。



  ・


「で・・・・?なんで外に来たの??」

不二の家を出て大分経ってからオレは不二に尋ねた。
すると、頓珍漢な答えが返ってきた。

「え?ドッカ行きたかったんじゃないの??」

どうやら不二はオレが何処かへ行きたかったように思っていたらしい。
それで何処へ行くかも解からずにとりあえず外に出てきただけなんだろうな。
・・・・・・・・・・やっぱコイツ、時々変だ。

「う〜ん、じゃあ、何処行こうか??せっかく天気いいし、このまま帰るのも勿体無いよね」

隣で気持ちよさそうに背伸びをして、中学生男子にしては小さい手で空を掴んだ。


 ・ ・


そのまま気が向くままに歩いた。行く先は足が勝手に決めた。
だって思考は全部ソッチに向いていたから。


 ・ ・


「あーつーいーーー!!」
「暑いね」
「嘘つけーーー!!全然暑そうじゃないじゃん!!!」
「ボクだって暑いよ」

・・・・・・・冬生まれはダテじゃない。夏は好きだけど苦手だ。
苦手だけど好きだ。暑いのは嫌いじゃない。


 ・ ・



「カキ氷・・・・・たべたい」



  ・


「いくら持ってる?」
「100円!」
「ボクは150円」

お互いにポケットの中を探って所持金を漁った。
突然のオレの我が侭に少しも動ぜず、不二は淡々と話を進めた。
コイツ、こういうところ強いと思う。

近くのコンビニでカップのヤツを買ってもいいんだけど、やっぱその場作りたてシャリシャリカキ氷(コレ、オレのポリシー)じゃないと、カキ氷なんていえないね。
そんな訳で、氷屋さんまで歩いた。

  
 ・ ・


ブ厚めの半紙に墨で書かれたメニュー。
端に赤字で「みるく入りは五十円増し」って書いてある。けっこう風流で、こういうのもいいよね。
自動でなく手動の重い鉄のカキ氷機が有る。

「一杯250円だって!二人で一杯でちょうどだねー。なんにしよっかー。オレね、イチゴがいいな!不二は?」
「ボク、レモンがいい」

ボクがいうと、思ったとおりエージはイチゴイチゴ騒ぎ出した。
氷イチゴはカキ氷の定番だよ??、とか、レモンは舌黄色くなるジャン!、とか、とにかく思いつく限り色々。

「ハイハイ、じゃあイチゴにしようね。スミマセーン。氷イチゴひとつ下さーい」
「不二天才ー!」
「ハイハイ」

全く、調子良いんだから。


 ・ ・


一分も経たないうちに、発泡スチロールで出来たカップに零れんばかりに盛られたカキ氷とサジ一本が出てきた。

お金を払って外に出て、近くの土手に腰を下ろした。


 ・


さっき作られたばかりの氷のカケラたちは、真夏の日差しと掌の熱ですでに溶け始めている。
上にたっぷりとかけられた赤いシロップを万遍無く掻き混ぜた。白に赤が広がってゆく。

「・・・・冷たい。美味しいね」

カケラを一口含んだ君がにっこり笑ってそう言った。

誘われるように俺も一口食べた。

「美味い。美味いよコレ!!!」


 
 ・ ・


  
美味しいだの、頭痛いだの、ぎゃあぎゃあ言いながら、サジを交換しつつ二人でカキ氷をつついた。
風が時々冷たくて、汗ばんだ肌に心地いい。

今日は暑い。とにかく暑い。朝から30度を越す程、夏は深まってきている。
蝉の声もする。

でも、一緒なら暑くてもいいよね。






さて、次は何処へ行こうか。

「ねぇ、不二、次は何処行く?」

「うん。そうだねぇ」


何処までも行こうか。










戻らせてください。




後書。

無理やりカキ氷を入れたのがバレバレな文。
スミマセン青葉サマーーーーーー!!サマーーー!!!(←エコー)

111ヒッツの「菊不二オプションしゃりしゃりカキ氷」という、
なんともツボなリクでした。
・・・・・・全然しゃりしゃりじゃない死・・・・。
スミマセンーーー!!青葉サマ〜〜〜!!
こんな馬鹿なヤツですがよかったら貰ってやってくださいなーーー。

ってゆうか、東京に氷屋さんなんてあるのかしら・・・。
私の町には御座います。(通称ド田舎村)

点点二個(・ ・)で挟まれている文は不二先輩視点で御座います。
残りは菊丸君。
なんか私にしては珍しい不二→菊っぽいですね!!!(死)
何時もは逆なんですよ。

コレにこりずに、またキリバンとっちゃって下さいー。
はじめてのキリバンが青葉サマで嬉しいですvvvエヘ。(危ない)