* 二月末のショートストーリー * 0229・A 「ただいま」 リビングのドアを開けると、珍しい人が居た。 「あれ、裕太、帰ってたんだ」 「・・・・・・・・・・・・・」 相変わらずむすっとしてボクの方を見る。こっちは喧嘩する気は毛頭無いんだけどな。 「久しぶりだねー、正月以来かな」 懐かしい再開におもわず声が弾む。そのまま向かいのソファに飛び込んだ。裕太は相変わらず、むすっとしてる。そんなに眉間にしわ寄せてると、誰かさんみたいだよ、っていったら、誰の事だかわかるかな? でも、裕太が何の前触れもなしに帰ってくるなんて珍しい、珍しすぎる。何か有ったんだろうか。 「裕太、今日は一体如何したの?」 「・・・・・・・・・・・・」 「でも嬉しいな」 今日はねえさんも家に居るっていってたし、久しぶりにきょうだいが揃いそうで嬉しい。思わず顔がほころんでしまう。 裕太、今日は泊まってくつもりなのかな。 裕太の周りを見渡すと、ちょっと大き目の鞄が目に入った。あれはいつも泊まる時につかってる鞄だ。 「今日、泊まってくんだ」 「悪いかよ」 「全然悪くないけど、今日も明日も平日だよ、学校はどうするの」 「明日朝、早めに出る」 「ふうん、なんだか忙しいね。でもなんでいきなり帰って来たの?」 「・・・・・・・・・・」 どうやら裕太は帰ってきた理由については述べたくないらしい。さっきからこの話題に持っていくと黙ってしまう。変なところで頑固なのは、母さん似かな? 「ね、裕太、何で帰って来たの?教えてよ」 「裕太はね、周助の為に帰ってきたのよ」 「姉貴――――――っ!!!」 キッチンでなにか作っていた姉さんが楽しそうに話す。うってかわって裕太はばつが悪そうに騒いでいた。 「あら、だって本当の事でしょう?」 くすくす笑いながらこっちにやってきて裕太を宥める。 また大きくなったわね、言いながら裕太の頭をくしゃくしゃにする。姉さんの癖だ。ボクも昔はよくやられた。 「でも、なんでまたボクの為なわけ?」 「あら、忘れてるの?」 「何を?」 「今日は周助の誕生日でしょ!」 「正確に言うと今年は無いけどな」 裕太がはき捨てるように言うと、由美子姉さんは「あんたはほんと素直じゃないわね―――」と言って裕太の頭を叩いた。 あ、そういえば今日・・・・・・ってことになるのかな。 ふとカレンダーを見ると、今日は二月二十八日。二月最後の日。今年も二十九日がないから、この家ではボクの誕生日は前の日ってことになる。部活では三月一日に毎年祝ってもらってるけどね。ややこしいんだ。 実際の誕生日じゃないからか、実感が湧かなくてすっかり忘れていた。 「裕太、覚えててくれたんだ」 「忘れたくても忘れられねーよ、そんな珍しい誕生日。忘れるのはお前くらいのもんだ。いつもボーっとして――――。」 「そうだね」 ボクが頷くと由美子姉さんと裕太が笑った。ボクも笑った。 * * * プレゼントとかはねぇぞーーーって裕太がいってたけど、姉さんと裕太とボクと、きょうだい三人が揃うことが、一番のプレゼントだよ。 「ありがとうね、姉さん、裕太」 其の日は姉さんの作ってくれたパイを食べながら、夜遅くまで三人で話した。 そして日付が変わるか変わらないかの瞬間に 「おめでとう、周助」「おめでと馬鹿兄貴」 声を合わせて言ってくれた。そんな時、やっぱりきょうだいだな、って思うんだ。 →誕生日企画へ戻る 色んな人に祝ってもらおうシリーズ第二弾。 第一弾は勿論菊丸君(笑)祝ってませんが、愛があるからいいのです。 なんて山も無ければ落ちも無い文なんだっ・・・・・!!! って、書いてて思ったんですが、先輩のお誕生日ということで こうなったら数で勝負です。(ダメじゃん) なんていいますか、兄弟話を書くときはいつも自分の兄弟を思い出して書きます。(笑) 嗚呼、もう、だめ・・・・・っ!(私が) |