* 言葉伝えてシリーズ何故か番外編閑話其壱 *
・・・・・「子供じみた思慮」
学校の無い休みの午後、菊丸の家に1本の電話がかかってきた。其れは乾からだった。
内容は極シンプルで、
「不二がそっちに行ってないか?」
菊丸は、いや、と答えると直に電話は切られた。どうやら不二が何処かに行ってしまったらしい。過保護な乾や手塚にとっては一大事だろうけど、菊丸にとってはそうでもなかった。いくら口が聞けないからと言っても、不二はもう中学生だ。そりゃ子供っぽいところも多々るけれど、迷子になるような年でもないし、もしそうなったとしても自分でどうにかできる知恵と知識と経験を持っている。だから大丈夫だ。
と、思っていたのだか、どうも落ち着かない。
菊丸は不二の家に電話してみることにした。電話帳を開くと「不二」という名前の家は一軒しか載っていなかった。きっと此処だろう。菊丸は受話器を上げてボタンを押した。
「あ、菊丸ですけど周助くん居ますか?」
「菊丸君・・・・、ああ、周助がいつもお世話になってる、」
出たのは若い女性だった。おそらく不二がいつも自慢している姉だろうと思った。確かに綺麗で通る声をしていた。品のある声だが、どこか慌てていた。
「周助ね、何処かに行っちゃったのよ・・・・・いつも出かける時はちゃんと行き場所を知らせてから出かけるのに。如何したのかしら。菊丸君、何か知らない?」
「いえ、何も・・・・・・・・・。」
「・・・・心配だわ。」
「何かわかったら電話します」
「・・・・ありがとう」
菊丸は受話器を置いてため息をついた。小さな子供でもあるまいし皆心配しすぎだとは思う。が、何より自分が心配だった。不二の性格からして皆に心配かけまいと行き場所を伝えて出かけることは容易に想像がつく。自分が守られていることを知っているからだ。それに甘んじることも無い不二が、心配を無駄にかけるはずが無い。短い付き合いだがそれは確信が持てる。不二はそういうやつだった。
「探してみよっかな・・・・・・・・・」
誰に言うともなく、菊丸は呟いて外に出る用意をした。自分も結局は過保護なのかもしれない。でも其れは仕方の無いこと。不二はどこかほっとけない部分がある。回りも其れが分かっていながらつい甘やかしてしまうのだ。それが不二の人徳というやつなのだろう。
手塚を思い出して、菊丸は小さくため息をついた。
・・・・・
大分時間が過ぎたと思う。
不二が行きそうなところは大体回った。図書館だった行ってみたし、公園にも行ってみた。だが不二の気配は何処にも無かった。
空は赤みを増していく。夕方は少し肌寒かった。
其れと同時に、言いようの無い緊張が菊丸の胸を支配していった。
―――――――もしかしたら事故に遭ったとか。そうでなかったら川に落ちたとか。人攫いからすれば不二なんて絶好の獲物だし。さっき不二の家に電話したら「まだ帰っていない」といった。もしかしたら、もしかするんじゃないか。
考えてから頭を振って考えを追い払う。そして自分に言い聞かせた「そんな筈は無い」。
焦燥感にとらわれながら、菊丸は何時の間にか走り出していた。
太陽が沈む前に、菊丸が最後にたどり着いたのは通いなれた学校だった。
・・・・・
居るわけが無い。そう思いながらも校舎内に足を踏み入れる。
足は自然と屋上に向かっていた。
・・・・・
空に通じる重く冷たい扉を開けると、其処には不二が居た。
安堵感で顔が緩むのが解る。
フェンスに指をかけて遠くを見詰める不二。音を出して閉まる扉に気付いていない筈が無いのだが、不二は菊丸の方を見ようとはしなかった。背後からそっと近づいてみる。
「如何したの、不二。皆心配してたんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
不二は俯いたままで動かなかった。
片手には菊丸のあげたスケッチブック。
「ね、不二、不二ってば!」
それでも菊丸の方を見ようとしない。焦れて無理矢理不二の細い方を掴んで自分の方を向かせた。
「・・・・・・!」
スローモーションのように不二の髪が揺れる。見開かれた瞳はいつになくするどかった。
不二の手からパタンとスケッチブックが落ちる。
泣いている・・・・・・・・・・・・・・・・ように見えた。
勿論涙は出ていなかったけれど、泣いているように見えた。
「不二?」
「不二、どうしたの」
落ちたスケッチブックを拾い上げて不二に手渡そうとしたが、不二は受け取ろうとしなかった。
「不二・・・・・?」
「もう、これいらないの?」
ちがう!といわんばかりに不二は首を強く振った。
「じゃあ、一体如何したの」
菊丸は出来るだけ優しく言った。そして掌を差し出して答えを待った。
菊丸はまだ不二の手話もわかわなければ、手塚のように思いを読み取ることも出来ない。そんな自分に出来ることは一つしかなかった。悔しかった。
そんな菊丸の思いを知ってかしらずか、不二は自分よりも一回り大きい掌にしぶしぶ文字を書き連ねた。
『スケッチブックつまっちゃった』
「なんだ、そんなこと?」
返ってきた答えに脱力すると、不二は「ボクにとっては重要なことなんだ」といわんばかりに睨みつけてきた。
いつも肌身はなさずもちつづけていた汚れたスケッチブック。
どれだけ不二が其れを大切にしてきたか、菊丸は今日はじめて知ることになる。
詰まってしまったから、もう菊丸と会話が出来ないとでも思ったのだろうか。その、不二らしくも、しかし子供じみた考えに菊丸は笑った。
「馬鹿だなー不二は」
優しく髪を撫でながら伝える。
不二は答えるように菊丸の袖を掴んだ。
「また新しいのあげるから」
こくり。
「其れがつまっちゃってもまたあげる」
こくり。
「だから勝手に何処へでも行っちゃダメだよ、本当に皆心配してたんだから」
・・・・・・・こくり。
俯いたままの頬に軽く触れると、不二は今日はじめて笑って、口の動きだけで
『ありがとう』
と告げた。
・・・・
帰り道、二人は手を繋いで帰った。なんだかご機嫌な不二に、菊丸は苦笑した。
「ねぇ、不二、オレね、ずっと不二の傍に居るよ」
一番星が見え始めた空を仰いで、菊丸は楽しそうに宣言した。不二は隣で笑って頷いた。
うん。
『ずっと一緒に居てね』
・・・・・
[戻る?]
16:32 01/12/24(わお!クリスマスイブ!!!/笑)
もっとラブ☆ラブ★にしたかったんですが、なんてゆうかこの話って友情モノになちゃってるので、恥かしくてかけませんでした(死)一回やってみたかったんですよ!本編と関係の無いお話!!!!やったぁ!なんか私モノ書きっぽいゾこのぉ!!!(そういう気がするだけ)
この後、先輩は乾と手塚と由美子姉さんにこっぴどく叱られます(笑)まぁ、それも愛情の裏返しって訳ですよ。(笑)
皆心配しすぎだと思うかもしれませんが、ちょっと考えてみてくださいまし。
あんなカワユイ先輩がひとりでふらふら出歩くんですよ?!
しかも白いし!!!(それはお前の設定だろう)
しかもしゃべれないんですよ!?(それもお前の設定だ)
攫おうとしても大声で助けを呼べないから無理なく誘拐拉致監禁できちゃうんですよ!!!(これは便利!)(オイ)
そんな先輩が目の前に居たら、私、とっくに誘拐してます(死)拉致かんきーん。
・・・・・(想像した)
た、楽しそうだ・・・・・・!!!!!!!(お前はいっぺん死んで来い!)
すみませーん、せっかくシリアスほのぼの書いたのに、雰囲気ぶち壊しv(死)
馬鹿ですみません!
* * *
む、昔書いたものです。と、鳥肌が!!!(泣き)
こんなに恥かしいシリーズもの、私知りません・・・・!!(泣き笑い)
でも、この雰囲気のメイツは好きです。ほのぼの〜。
流れ的にはちょうど七話目の後くらいのお話ですね。