自分を嫌いになる時が有る。
其れは
この瞬間。
殺してしまいたい程に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・憎い。
・・・・・・・「劣等感」
其れは或る日の事だった。なんでもない普通の休日。空は呆れる位に好い天気で、なんとなく家にいるのが勿体無くて、不二は外に出かけた。
「周助?出かけるの?・・・・・そう、暗くなるまでには帰って来るのよ」
昔よりは心配性じゃなくなった姉に、「大丈夫」と言う代わりに笑顔で返した。
昔は外に出ようとするだけで行き先は勿論「私も行くわ!」なんて言って、無理についてきたっけ?
自分が愛されていると思う反面、どうしようもなく申し訳なかった。はやく一人前になろう、無理だとしても。毎日そう考えていたっけ。
不二は懐かしむように、淡く笑って外へ通じる扉を開けた。
・・・
とりあえず本でも買おうかと、本屋に出かけることにした。初夏の香りがする並木どうりを歩いていると、自然と気分も良くなってくる。
今日は少し遠めの本屋まで行ってみようか。
不二はうん、と頷いて、そのまま軽い足取りで一つ先の本屋に行き、小さい文庫本を買って店を出た。
何時もとは違う余り見慣れない街。小さいけれど、子供が楽しそうに遊んでいる公園、入り組んだ路地裏、其の角に有る赤いポスト、古い橋のかかった狭い用水路。
・・・・・・そういえば、エージの家はこの辺だって言ってたっけ?
唐突に思い出して、自分の家にむかう足を止めた。せっかくのいいお天気、此の侭帰るのは少し勿体無い。散歩がてら、当ても無く菊丸でも探そうか。
別に逢えなくてもいい。まだ日没までには充分時間もあるし。不二はまた、うん、と頷いた。
そうしよう。
そして不二はまた歩き始めた。
こうやって歩いている事が、ただそれだけが楽しかった。
・・・・
十分程歩くと、大きな通りに出た。十字路と信号と、其の先には商店街。四時近くで、夕飯の買い物だろうか、やたらにぎわっていた。
「商店街の肉屋のおばちゃんがオレのファンでね、オレがお使いに行くとまけてくれんの!」
自慢するように話していた菊丸を思い出した。嗚呼、きっとあの商店街がそうだ。
そう思った瞬間、不二は見慣れた背中を見つけた。十字路の信号を渡ったすぐ傍。赤毛のクセっ毛が足取りにあわせて跳ねている。
エージだ。
認識したと同時に、不二は走り出していた。其の差たったの10メートル前後、不二の足ならすぐに追いつくはず・・・・・・・・・だった。其処に信号が無ければ。
皮肉にも目の前の信号は赤に変わり、不二が足止めをくらっている間にも、菊丸との差はどんどん開いていく。当ても無く探していた人物がまた遠く遠くにいってしまう。
そんなのはイヤだ。なら如何すればいい?
そうだ、呼び止めればいい。ボクがエージって呼べば、振り返って笑ってくれる。いつもみたいに、ニカって、音が出そうなくらいの笑顔で、笑って、笑ってくれる。
そう思った瞬間、反射的に声を出そうして不二は我に返った。告げられるはずの名前は音には為らず消えていった。
エージ・・・・・・・・・・・・。
不二はただ呆然と、小さくなっていく菊丸の背中を見ながら立っていた。信号が青に変わっても、菊丸が視界から消えてもただ、立ち竦んでいた。
薄い下唇をぎゅっと噛んだ。血の味がしても其れしか知らない子供のようにただ、噛締めていた。
不思議な事に今まで全くと言っていいほど感じる事の無かった劣等感を、この時初めて感じた。
音を出すという当たり前の能力が無い咽喉という器官、其れと役立たずのソレを持っている自分、この両方が、憎くて、しょうがなかった。
周りからは当然のように夕方独特の喧騒が聞こえる。
子供が親を呼ぶ声、其れに親が答える声、他愛の無い女子高生らしき二人組みのおしゃべり、犬の鳴き声、子供の笑い声。
悔しい、悔しい、悔しい、でもそれ以上に自分がーーーーーーー憎い。
気が付くと不二は、自分の咽喉を掻きむしっていた。痛みに我に返って、菊丸がいるはずの商店街には行かずに、其の侭家路についた。
1日たって冷静になっても、咽喉の爪痕は消えなかった。
続く。
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く・・・暗いです。(汗)ι←最近ようやく解った汗マークの作り方v(イオタだったんですね!?)
最近手を付けてなかった連載小説ですが、ちょっとした事情で(笑)久しぶりに続きを書いてみました。(単純です/笑)
嗚呼、ワケがわかりません。作者にもわからないのに皆さんに解るわけ無いですね。(オイ)
(スミマセンスミマセン!)
イヤ、オチは最初から決まってたし、この話も入れようってのは決まってたんですが、この先からオチまでが決まってなくて書くの遅れました(汗)
ってゆうかマダ決まってないんですがね!(死ね)
さー、デコ頑張るぞぉ〜★(逃走本能)(現実逃避)