ずっと昔遠い昔
遠くから遠くから聞こえてきた声
今も変わらず聴こえていました。
・・・・・・・・夕焼けと空
「最近不二が暗い」
手塚は乾に話し掛ける。日はもう傾きかけていて、辺りは見る見るうちに暗くなっていった。残酷なほどに夕焼けが綺麗だった。不二と菊丸が学校帰りに寄り道して帰るから、と言ったので、帰る方向の同じ二人は必然的に一緒に帰ることになった。
いつもは不二も一緒に通る道。今日は彼はいない。
少しの寂しさを感じながら、乾は手塚の問いに答えた。
「そうかもしれないな・・・」
不二の変化には乾も気付いていた。ダテに長く一緒にいるわけでない。
少し前から薄々感じ取ってはいたものの、あえて見てみぬふりをしていた。だって理由は分かりきっていたから。
「アイツと長く一緒にいるようになってからだ」
「ああ」
「やっぱりアイツに近づけるべきじゃないんじゃないか?」
「いや、そうとも言い切れないだろう」
菊丸に対する嫌悪感を体中からふき出させながら話す手塚に苦笑しつつ、乾はフォローを入れた。
「菊丸と仲良くなってから、大分世間ってものが分かってきた見たいだしな。俺達が過保護にし過ぎたせいで、不二は世間知らずになってしまったからな」
アイツはもっと外の世界を見たほうが良いんだよ、そう付け足して分厚いレンズの眼鏡を人差し指で押し上げた。
不二は綺麗なものしか知らない。綺麗なものだけしか見せなかったから。だから純粋で真っ白な人間になってしまった。それはそれでいいのだが、今のご時世それじゃあちょっとばかり辛すぎる。純粋なのは大いに結構なのだが、生き抜くための最低限度の「知識」を身につけたほうが良いだろう。綺麗なものばかりではないからこの世界は。・・・・・・・・乾はそう考えた。
手塚だって乾の言わんとしている事は解かっているつもりだった。確かに不二に知ってもらいたいことが山ほどあるのは解かる。アイツに見せたい物だって、狭い視野を広げてやりたいって、でも辛い事も知ってもらいたいって、手塚だって思いは同じだ。
だけど不二が悲しそうにしている。
たったそれだけの事だけれど、手塚にとっては重大な事で、割切れないことだった。
「頭では解かっている。だがな・・・もう見たくないんだよ」
音を無くした事に気付いたアイツを。
手塚は不二がまだ喋れた頃、遠い昔を思い出してため息をついた。
「其れは俺も同じだ」
「・・・・そうだな」
血のように赤い夕日はとっくに沈んで、辺りは墨をぶちまけたように暗くなっていた。
・・・・・・・・・
→ススム
→モドル
19:55 01/06/01
先輩は小さい時は喋れたのですが、ある日病気にかかって喉をおかしくしてしまいます。先輩は小さかったのでその事を知らず、生まれた時から自分は喋れなかったのだと思い込んでいます。家族や手塚たちも其の方が諦めも尽くし良いだろうと、本当の事を教えようとは思いませんでした。・・・・・・と言うなんともわかりにくい設定です。あは。(じゃねぇよ)
ってゆうか短いですね・・・。ごめんなさい。
実は三話目を二つに切ったそのうちの一つなんですよ。(だからこないに短いのです)
すみません・・・・。
こっから暗くなるかも知れません(死)