音を伝える手段は?

音と言葉は違うのですか
音と声が別物であるように







:::::::::::「言葉」






退屈な午前の授業が終わって、待ちに待ったお昼休みに入る。
菊丸は不二との約束どうり、一緒にご飯を食べるために急いで屋上に向かおうとした。幸い今日は晴れている。まぁ、喩え雨が降ったとしても菊丸は屋上に向うつもりだったのだが。
弁当箱を抱えて、足早に教室を出ようとすると、後ろから乾の声が聞こえた。

「屋上に行くのか?」

意外な問いかけに菊丸は一瞬驚きを見せる。だれにも言ってないのに。

「何で知ってるの?!」
「不二から聞いた。今日はあんまり待たせるなよ」
「うん!」

元気よく頷いて、旧校舎の屋上に向かって走り出した。



・・・・・・



菊丸と不二が屋上で昼食を食べる事になって、一週間がたった。






右手に弁当箱と茶色の紙袋を持って、いつものように重い扉を開けると、其処にはいつもと同じ風景があった。まぶしい光の中で不二が笑って立っていた。不二が其処にいるということに安心感を覚え、菊丸も思わずつられて笑ってしまった。そしていつもの会話を交わす。

「晴れてよかったね」

こくり。

嬉しそうに頷く不二が、なんだかとても幼く見えた。春にしては眩しすぎる太陽の下で、二人は仲良く座って昼食を食べた。
不二は言葉が話せない。故に、菊丸が一方的に話し、不二が其れに相槌を打つと言った感じでコミュニケーションを取っていた。もともと菊丸は自分の話を聞いてくれる人が好きだし、不二も人が楽しそうに話をしているのを見るのが好きだったから、二人は一方的な会話を充分楽しんだ。

「そうだ。不二、乾と幼馴染なんだって・・・?オレ、同じクラスなんだけどさー、乾に聞いてビックリしちゃったよ」

コクコク、と菊丸の言葉一つ一つにまめに反応して、不二は不二なりの「言葉」を伝えた。でも、菊丸にとって其れは「ハイ」「イイエ」という大雑把な意味でしか取れずにいた。首を縦にふったら「ハイ」横に振ったら「イイエ」。小首を傾げたら「ワカラナイ」。其れぐらいしか意味を取れずにいた。

アイツだったら、もっと不二の言いたいことが解かるんだろうか?
菊丸の脳裏に手塚と言う人物が浮かび上がる。目や表情だけで不二の伝えたいことがわかる人物。其れがやけに羨ましかった。

急に喋らなくなった菊丸を不審がって、不二は菊丸の顔を覗き込む仕草をした。
どうしたの・・・?と言っている風だった。

その綺麗な顔に苦笑して、菊丸は食べ終えた弁当箱を包んで、其れと一緒に持ってきた紙袋を取り出した。

「ハイ。プレゼントフォーユー」

「???」

いきなりの展開に不二は目を見開いた。目をしぱしぱさせて、菊丸と差し出された紙袋を交互に見る。ボクに?とでも言うように、不二は自分を指差した。菊丸はにっこり笑って頷いた。そのまま不思議そうに受け取って、茶色い紙袋を開けてみた。中には、一冊の小さいスケッチブックと紺色のマジックが入っていた。取り出して、小首を傾げる。すると菊丸が恥ずかしそうに説明してくれた。

「いやーさー、オレ手塚みたく不二の言いたいこと解かんないしさー。だから、オレに何か言いたかったら、其れに書いてね。そうすれば、一緒に話出来るっしょー」

菊丸なりに考えた、不二とのコミュニケーションの取り方だった。手塚のようには急にはなれないけど、自分なりに不二と話がしたかった。あくまで対等で居たかった。不二の「言葉」が聞きたかった。
照れ隠しに頬のキズバンを触りながらそういうと、不二は嬉しそうに笑った。本当に嬉しそうに笑った。

『ありがとう』

と言う代わりに、小さなスケッチブックとマジックをぎゅっと抱きしめて、綺麗に笑って見せた。

「ね、ね、オレの名前書いてみてよ!」

一度も呼ばれたことの無い、一度も呼ばれる事の無いだろう名前。
不二は少しもったいなさげにスケッチブックの一枚目を開いて、其処に大きく「きくまるえいじ」と書いた。中学生にもなっての平仮名表記に、菊丸は思わず吹き出してしまった。不二が不思議そうに見つめてくるのがわかる。

「漢字はこうだよー」

不二の手からペンをとって、不二の書いた名前の下に「菊丸英二」と付け足した。

「エージって呼んでね・・・・ってゆーか、エージって書いてね」

そういうと、不二は「エージ、アリガトね、大切にするね」と書く。やっと聞けた不二の「言葉」。自分の「言葉」が声としてでなく伝わる事。お互いに満足して笑いあった。



・・・・・・・


それから不二はスケッチブックと紺色のマジックを肌身はなさず持つようになった。でもそれを、他の人との会話の手段としては使わなかった。菊丸と話すときだけ、小さなスケッチブックを開いて「言葉」を書いた。

『今日ね、姉さんがお弁当つくってくれたんだ』

「へー。いいな〜。不二の姉ちゃんかー。きっと美人なんだろうなー」

大きくこくりと頷いて、そのままペンを走らせる。

『姉さんは町一番の美人だよ。今度うち来る?見たらビックリするよ』



二人は色んな事を話した。
不二はその事を嬉しくも思い、同時に哀しくも思った。菊丸と紙の上での会話を交わす度に、どうして自分には音が無いのだろう、と考えるようになった。今までは違った。小さい頃からずっとそうだったから、不便だ何て思ったことも無かったし、自分の思いを読み取ってくれる家族と友達がいた。だから自分に音が無い事を深刻に思い悩んだ事は無かった。つまり、菊丸とであって、世界が広がったのだ。いままで不二が生きてきた所よりももっと広いところに菊丸によって連れ出された、そんな感じがしていた。

どうして自分は話せないんだろう。

不二は日に日にこのことを思い悩むようになる。もちろん手話だって出来るし、菊丸とそうしたように紙の上での会話を交わすことだってできる。目と目だけで感情を読み取ってくれる大切な人もいる。でも、それだけではだんだんと不満になってきた。

声が欲しい。
自分の音が欲しい。

そして不二は悲しそうに笑って、スケッチブックを閉じる。






・・・・・・・・・

→ススム
モドル




19:55 01/06/01

・・・・・・・・・・それにしても、先輩白いよ!!(白好きだけど)
白すぎだよ!!(好きだけど)なんでそんなに白いんだよ!!!!(好きだけど!)

昔は白不二派と言い張っていましたが、なんだか最近彼が「白いだけではない」ような気がしてきました・・・・・。(汗)
・・・・・ブラックの方が、受け度高いと思いません・・・・??同士求む!(笑)

文才が欲しいです。(切実に)
さーテストだテスト!!(ヤケ)←明日からテスト。
馬鹿の見本ですね。