過去という死者への惜別を

昔組み立てたプラモデルで、足りなかった部品は何か
桜の花 春のにおい ピンク色の香水壜
はらりと舞い落ちる睫毛の儚さ 優雅に瞳を閉じた死
雨で滑る階段 涙で滑る瞳 滑り落ちる感覚
昔砂場で作ったお城は、誰のためだったのか
取れたて檸檬 爽やかな風 黄色のキャップ
もう一度思い出してみよう
 
紅い頬
水色の瞳
黄色の爪
白い未来
黒く塗りつぶされた過去
忘れられない 忘れることはできない
打ち寄せ そして返る波のような 心音
睫毛はよく喋る 呆れるほど
 
作られた楽園
消された楽園
塗り替えられた自由
剥がれ落ちた不自由
きのうは笑顔
きのうは曇り
さあ、キッチンに立ってスパゲティをアルデンテで
死者のための晩餐を
 
夢で蘇るヴィジョンははっきりと鮮やか
思い出される思い出 二度と存在し得ない過去へのアプローチ
目が醒めた後の世界は味気なくて
夢、夢、夢、夢が欲しい いますぐ夢を 夢を
そう、だから
また眠ろう おやすみ、いい夢を
揺ぎ無い明日への第一歩