無への収束か無限大への発散の血色の抵抗

 

くだものナイフ、魚をまな板にセット
腹を切り開いて、内臓を確認
ピクピク動く心臓めがけて、針を一刺し
溢れ出た緑の液体が、これは夢だと告げる

理科室に置いてあった
鶏や猫の解剖標本、カエルの脳、神経、トカゲの死骸
すべてを明確に思い出して、スケッチスケッチ
シャーペンの芯があまりにもよく折れるから
これは誰かの陰謀だって叫ぶ

そういえば
マキちゃんの兄貴に、ベランダから落とされそうになったんだけど
僕、まだ生きてるよね
アキラに、ジャングルジムから落とされたけど
僕、まだ生きてるよね
なんで、僕はまだ生きているんだろう
明らかに不安定な生命の持続は、何によってされるんだろうって
唄ってみるけど、誰も聞いちゃくれない

ナイフで自分の胸を一突きする
隠し持った拳銃で自分の頭を打ち抜く
そんなフラッシュバックが、続く続く
浮かんでは消え、消えては浮かぶ

僕という生命
僕という意識
僕という個
僕という集合
僕のような僕

昔の僕なら、何にでもなれた
テーブルの上の空き缶だったり、友達だったマキちゃんにだって
それなのに僕は、もう僕にしかなれない
すべて収束して、無に近づくか
すべて発散して、無限大へ飛ぶか
そんなのは、僕には耐えられなくって

多分、この世界はぎりぎりのところを彷徨っている
僕には見えるんだ、血色のフィルターを通して
ぎちぎちと音をたてる怪物が、すべてを飲み込もうとしているのを
だから
昔魔女に聞いたとおり、僕は日夜頑張って内臓蒐集を続けてる
その怪物になるために、現状の僕を打破するために
すべてを飲み込んで、すべてを僕のものに