ひとりになれない

 

 

死ぬために登ってきた、高いビルの上

僕は手すりに手をかけて

少し、深呼吸

 

金属製の冷たい手すりの下をくぐって

ビルの端っこに立つ

ガーゴイルみたいだな、って

そんなばかな冗談に一人微笑って

 

一面の、夜景

きらきらしたネオン

まばらな、星のようなビルのあかり

本物の星を塗りつぶして

一生懸命自己主張するひかり

一面の、夜景

寂しい寂しいと叫ぶ声が聞こえる

僕の目の前に広がる

人間がつくった星空

 

ひとが死んだら、星になるって

じゃあ、僕がここから落ちたら

僕は

夜空の星になるかな

それともビルのあかりになるかな

 

冷たい手すりが僕を拒否する

感覚を無くした手を、そっと離して

手をめいっぱい広げてみる

今度は深く、深呼吸をする

 

孤独に満ちたこの星空へ、ダイブ

落ちる感覚は皆無

浮遊感がひとつまみ

ただ、僕の眼前には

君の顔