蓮さんからいただいた、小説です。王天君モノ。蓮さん、ありがとうございます!!


『醒めない悪夢』

暗い封印籠の中・・・・。一人の少年道士がいる。 かつての王天君、王奕。 ここに閉じ込められて、もう一月はたっただろうか。 眼の下の疲れた隈が、その答えを物語っている。 瞳は光を失いかけ、ぼんやりと闇を見つめている。 まだ、ほんの少しだけ残っている、正気を保つために。 しかし・・・。王奕は少しずつ、少しずつ・・・。確実に壊れていった。 「ねえん、寂しいでしょう?つらいでしょう?」 だっきが、猫撫で声ではなしかける。 うつろな声の主が答える。 「うん・・・。ここ・・・怖い・・寂しい・・・つらい・・・」 「可哀想な子・・・。崑崙山のために、あなたは犠牲にされたのねん・・」 「オレが・・犠牲・・・?」 「そう・・・。元始天尊は、自分の大切な崑論山のために  あなたを犠牲にしたのん。」 「そう・・・なの・・?」 小さな肩がピクンと震えた。そして、うつろな声をだす。 「元始天尊様は・・・オレが・・必要なかったの・・・かな・・・?」 「もちろんよん。元始天尊は、あなたのことなど、少しも  考えてはいないわん。元始天尊は、自分と、自分の    大切な崑崙山の事しか考えていないもの。  もう、あなたのことなんて忘れているわん」 「・・・そう・・・」 また、肩が震えた。 「元始天尊だけじゃない・・。崑崙の誰もが、用済のあなたのこと  なんて忘れている。あなたは・・・  自分の信じていた全てに裏切られたの・・・」 「・・そう・・なんだ・・・」 光を失った瞳から、一筋の雫が流れ落ちた。 「憎いでしょう・・・?自分を裏切ったモノ、壊したモノ・・  全てを壊したいでしょう・・・?・・自分と同じように・・・」 この一言が引き金だった。その瞳に、悲しみ、憎しみ、怒り、痛み・・・。 全ての『負』の感情があふれた。 「憎い・・・元始天尊・・崑崙・・全部・・・」 だっきは微笑み、囁いた。 「わらわがここから出してあげる。あなたの憎しみに力をかしてあげる」 「・・・・・・ああ・・・・・・」  きっと、この悪夢は醒めない。・・・永遠に・・・。