1998年度SMベストビデオ解説
「アタッカーズの猛撃・新レーベル続々登場」
1998年は日本のシステムそのものが根底から覆された年だった。凡人が首相の座につき、「アイアムオプチミスト」とオヤジギャグを飛ばした。失業率は4%と
いう高さを保ち、長銀、日債銀が国有化された。「毒」という言葉が社会を表わすキーワードとなった。これまで日本人が享受していた安全、安定というシステ
ムが音を立てて壊れていくのを多くの人が実感した。
そんな中、SMビデオ界もシネマジック、アートビデオ、奇譚クラブという寡占体制が崩れ、たくさんのレーベルが参入した。アタッカーズの蛇縛・死夜悪、ハリウ
ッドフィルムのスパイダー、サクセスエンターテインメント、どれも基本的にはレンタル禁止のセルビデオだが、ヘアーが完全に表現され、性器の形が判る程度
のボカシの薄さで人気を集めた。
その中では蛇縛・死夜悪を持つアタッカーズが猛進撃を行った。ベスト10を見ても1位を始め合計4本が入賞している。どちらのレーベルもストーリーを重視し
た丁寧な作りと、有名なAV女優を使うことが特長で、多くのセルビデオ屋はアタッカーズのコーナーを設けた。また、蛇縛はセックスシーンを排除し、SMに絞
ったこと、死夜悪は中だしを行い凌辱を徹底的に表現したことも、大手のSM・凌辱ビデオに飽きたマニアの支持を得たのではないだろうか。
1位の「蛇縛輪姦 2」は秋山みほといういかにも少女っぽい女優を使い、折檻としてのSMを表現した。責めも鞭、バイブ、クリップとバラエティに富み、バイブ
責めも折檻の一部であることを強調したこと等、オーソドックスなSMビデオだ。3位の「蛇縛輪姦」は蛇縛の第1作で強烈な股縄責めと片足吊りが印象的だっ
た。4位の「蛇縛のコックピット」は持田薫という人気巨乳女優が涙を流すまで徹底的に責めた娯楽作品となっている。以上、蛇縛はある程度の水準を保ってき
たが、最近になって勢いが失速したという印象もある。99年はどういった作品を作るか注目される。
死夜悪は基本的には凌辱レーベルでSMではないが、7位の「美畜病棟」は橘未稀へのバイブ責めにより、SMビデオとしても高く評価した。ただ、凌辱ビデオ
としては第13位「生贄の損失補填」のほうが傑作と思われる。「生贄の損失補填」には残念ながら拘束シーンがなく、SMビデオとしては評価はできなかった。
ただ、非常に丁寧な作りで、特に主演の遠藤悠美が責められるときだけではなく、これから行われる凌辱行為に対する怯えまでも表現しているところは他のレ
ーベルも見習うべきだろう。
いわゆる老舗のシネマジックは昨年同様、今年も様々な美人女優を使いマニアを楽しませてくれた。2位の「奴隷姉妹 3」は最後まで1位を争い、1ポイント差
で1位を蛇縛に譲った。篠原真女・小野美晴という美人女優を上手に使い、肉体的だけではなく心理的な責めの表現にも成功した傑作だ。ただ、自らSMの世
界に入ってゆくという点で「蛇縛輪姦 2」に1歩及ばなかった。
シネマジックの作品は合計4本入賞した。6位の「緊縛レンタル妻 若妻、貸出し中8」は主演の沢山涼子の羞恥心を表現できる演技力を評価した。白鳥七瀬
の作品も8位と9位に入賞した。ふたつの作品も丁寧な作りと縛られた女性の美しさを表現した作品だと思う。10位の「生贄のキャンペンガール」は昨年のベス
トビデオ「奴隷秘書17」の大沼栄太郎監督の作品で、責めも女優もそこそこ評価できる作品ではあるが、「奴隷秘書17」に比べると脚本があまりにもシンプル
すぎた。
もうひとつの老舗のアートビデオは5位に「奴隷通信 No.5」 が入賞している。ただ、この作品は主演の田川沙也が筆者の好みであることだけで入賞した作品
であり、生理中の女優を使うなど作品の荒さも目立つ作品だった。アートビデオは昨年と同様、素人を使った作品を多く提供した。ストーリー物が減り、作品も
昨年に比べるとさらに雑になってきている。黒田透のいた頃と比べると同じレーベルであることすら忘れさせるような水準であり、根本的な改革を望みたい。た
だ、このレーベルはホームページが充実している。特に視聴者の感想や主演女優の消息を集めた「よもやま話」が面白い。
女優は橘未稀がベスト女優に輝いた。「美畜病棟」でのバイブ責めへの反応を高く評価した。ただ、彼女の場合、石川麻矢名義でシネマジックの「被虐のレー
スクイーン」にも主演している。この時の演技は拙く、筆者も同じ女優であると判らなかった。こう見ると女優は個々のビデオに合った女優を使うべきだというこ
とを再認識した。
2位以下の女優を見ると、有森いずみは連続しての入賞で、今年も美人ではないけど、縛られると美人となる表情を評価した。3位の白鳥七瀬は緊縛前の清
楚さと責められているときの哀れさのギャップと涙を評価した。4位 星崎るなはからだの美しさを、5位の篠原真女と小野美晴は主演作品の多さに注目した。
篠原も小野も半年間に6本のSM作品に主演している。ただ、主演作品が多いと、ありがたみも激減するというのも事実である。8位の中野よう子の作品「愛
奴若妻・淫ら壺」は斉藤茂介監督のタコビデオであり、作品は評価できないが、肌の美しさを評価した。9位の秋山みほは「蛇縛輪姦」での演技を評価したが、
アートビデオの主演作「みほ18才」「放課後の密戯」(両作品とも斉藤茂介監督)の彼女の演技は評価できなかった。SMビデオも監督の力量は大きいと思っ
た。アートビデオに斉藤茂介がいる限り、アートビデオの発展はないと言って良いだろう。同じく9位の麻生早苗は、美人度は高い。もう少し、風情のある演技
ができればベスト3に入賞できる美貌と思う。第17位の「奴隷女教師・女囚淫夢」では石抱き責めに号泣した。
99年全体としては、作品の水準は若干低下したように思える。これはシネマジックに「奴隷秘書17」のような決定的な傑作がなかったこと、奇譚クラブが結城
綾音、真木いずみ、雪乃こずえと一家心中してしまい、どの作品もベスト20に入らなかったことに起因する。やはり、発表作品の多い大手レーベルの作品水
準が高いと、SMビデオ業界全体が盛り上がるので、今年は老舗の発奮を期待したい。
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