あさだくんの UNIX 入門

Contents

  1. はじめに
    1. UNIX ワークステーション
    2. 電源の ON、OFF
  2. UNIX 入門
    1. login, logout
  3. 基本的なファイル操作
    1. 基本的なコマンド
    2. ファイル名
    3. パーミッション
    4. フォアグラウンドとバックグラウンド
    5. オンラインマニュアル
  4. シェルの機能
    1. パイプとリダイレクション
    2. ヒストリー機能
    3. ジョブコントロール
    4. 正規表現
    5. 別名機能 (エイリアス)
    6. サーチパスと初期設定ファイル .cshrc
    7. tcsh
  5. エディタについて
    1. UNIX 上で動くエディタ
  6. ネットワークとは
    1. IP アドレスとホスト名
    2. リモートログイン
    3. telnet と ftp
    4. NIS と NFS

はじめに

UNIX ワークステーション

研究室に配属されて、はや×日…素晴らしい先生、親切で頼もしい先輩方に囲 まれて、研究テーマも決まって、新たなる卒研ライフへの希望に燃えているこ とと思います (ほんまかいな…)。

ところがそんなあなたの前に立ち塞がる巨大な壁があります。研究室に並んで いる "ワークステーション" という代物です。それは噂に聞く "UNIX" という 奴が動いているらしい…。もちろん中には「UNIX、知ってるよ〜ん」という人 もいるでしょう。でも、「何だか難しそうだ」とか「あたしパソコンも苦手な んですぅ…」という人もいると思います。

これは、そういった初心者の人のために書きました。

UNIX は 1960 年代後半に、アメリカの AT (ベル研究所) で開発され、その 後 C 言語によって記述されるようになり…と言うような話はどこにでも書い てあるのでここでは触れません。興味のある人は自分で調べて下さい。

UNIX ワークステーションは、普通に使っている限り別に難しいものではあり ません。確かに UNIX という OS は、割合無愛想なところがあって、とっつき にくい感じがしますが、慣れてみればそれも可愛いものです。ある程度使える ようになれば、きっとその便利さが分かってもらえると思います。

なお、UNIX と呼ばれている OS にも、開発元やバージョンによって細かい違 いがあります。ここに書いてあるような基本的な事柄に関しては大体同じよう に使える筈ですが、もし違っていても心配しないで下さい。以下特に断わらな い限り、ワークステーション (WS) は Sun Microsystems の SPARCstation、 UNIX は SunOS 4.1.3 を例に説明します。

電源の ON、OFF

普通はワークステーションというやつは、使い終ったらいちいち電源を切るよ うなものではありません。普通のユーザは電源に触らないように言われる事も 多いと思います。まぁ、もしかしたら自分で立ち上げなければならない場合も あるかもしれないので、一応説明しておきます。以下のようにして電源を入れ ましょう。

まず、複数の WS でネットワークを組んでいる場合 "サーバ" のマシンが動い ていないと立ち上がることができません。この機械は、ユーザの ID を管理し たり、電子メールを受けとったりと日夜忙しく働いているため、滅多に電源を 切ることはないと思いますが、一応動いているかどうか確認して下さい。 あとは、

  1. 周辺機器 (プリンタ、ディスク、ディスプレイ、CDROM など) の電源を入れる。
  2. 本体の電源を入れる。
  3. しばらく待つ。([機械の名前] login: というメッセージが出ます)
もし、複数のハードディスクがつながっているときは必ず全部の電源を入れる のを忘れないように。また、ディスクの電源を入れてから、回転が安定するま で少し (十数秒くらい) 待ったほうがいいでしょう。

作業が終わっても、普通電源を切ることはないと思います。もし自分で切らな ければならない場合は、必ず管理者の指示に従って下さい。パソコンと違って いきなり電源を切ってはいけません! (ディスクの内容が壊れてしまう可能性 があります) かならず、指定された手順を踏んでから電源を切ってください。

もし、何かよくわからないことがあったり、変になってもあわてて電源を切っ たりしないで、システムの管理者に言ってください。

システムの管理者というのは、一般ユーザが WS を使うための様々な設定をし たり、新しいソフトウエアーをインストールしたりする人のことです。そのた めにシステム管理者は、"root" という名前で WS を使っていて、いろいろな 特権を持っています。

WS は一人の持ちものではなく、みんなで使うものです。何か問題があったら、 無理をせずにシステム管理者の人に聞きましょう。管理者の人はみんな豊富な 知識を持った、親切な人達です。きっと、怒らずに親切に教えてくれることで しょう (ほんまかいな…)。

UNIX 入門

login, logout

では、実際に WS を使ってみましょう。皆さんは一応 MS-DOS などを使ったこ とがあり、"ファイル" や "ディレクトリ" という言葉については一応知って いるものとします。UNIX はマルチユーザ (複数の人が使う) の OS なので、 作業を初める前にまずログインという作業をしなければなりません。

画面に

    [機械の名前] login:
と出ていることを確認して、あなたのログインネーム (システム管理者に聞い てください) を入力します。とりあえず "asada" としましょう。
    [機械の名前] login: asada
パスワードを設定してある場合は、パスワードを聞いてきます。
    Password:
パスワードを入力してください。 (画面には出ません) 色々なメッセージが出 て、プロンプト (入力を受けつけますというマークのこと。自分で設定もでき るよ) が表示されます。また、電子メイルが届いていれば、"You have new mail" と表示されます。

ここでウインドウシステム (後述) が動きだす場合もあります。その場合は少 し勝手が違うので、ウィンドウシステムに関する説明も合わせて読んでくださ い。

パスワードを設定していない人は、すぐに設定しましょう。"yppasswd" とす ると、"New password:" と聞いてきますので 8 文字以内で好みのパスワード を入力してください (あまり短いものや、自分の名前、覚えられないようなも のは使わないで下さい)。すぐに "Re-type new password:" と出ますので、も う一度同じものを入力してください (もし打ちまちがっていると困るから)。 これで次回からはパスワードを入力しないとログインできないようになりまし た。

パスワードを変更するときも、同じく "yppasswd" を使います。最初に "Old password:" と聞いてきますので、今のパスワードを入力しなければなりませ ん。

コンピュータを使い終って、次の人が使える状態にすることをログアウトとい います。作業が終わったら、今度はログアウトしなければなりません。コマン ドを受け付ける状態 (プロンプトが出ている状態)で、"logout " とタイプし てください。いくつかメッセージが出て、

    login:
と表示され、次のログインを受け付けます。お疲れ様でした。

基本的なファイル操作

UNIX のファイルシステムは、階層ディレクトリと呼ばれツリー (木) 構造に なっています。MS-DOS と同じですね (DOSが真似したんだけど)。ディレクト リの区切りは "/" です。現在自分がいるディレクトリ (カレントディレクト リ) は "."、その一つ上は ".." として表せます。また、ログインしたときの ディレクトリをホームディレクトリといいます。

基本的なコマンド

まず、現在の自分のいるディレクトリは "pwd"(Print Work Directory) で表 示できます。現在のファイルの一覧を見るためには "ls"(LiSt) コマンドを使 います。例えば私の場合だと、
    duck{asada}1: pwd
    /home/home1/asada
    duck{asada}2: ls
    Calendar        News           hello.c        tmp
    Mail            a.out          source
    duck{asada}3:
のようになります。"duck{asada}1:" が、機械の表示するプロンプトです。

詳しいリストを見るときは "ls -l" としましょう。

    duck{asada}4:   -l
    total 16
    drwx------  2 asada        1024 Apr 21 03:54 Calendar
    drwx------ 15 asada        1024 Apr 25 00:16 Mail
    drwxr-xr-x  7 asada        1024 Apr 23 22:23 News
    -rwxr-xr-x  1 asada       24576 Mar 10 17:28 a.out
    -rw-r--r--  1 asada          63 Mar 12 12:48 hello.c
    drwxrwxr-x 16 asada         512 Apr 24 00:30 source
    drwxrwxr-x  4 asada         512 Apr 24 22:11 tmp
    duck{asada}5:
これは左側から、そのファイル (またはディレクトリ) のパーミッション (後 述)、リンク数、所有者、サイズ、日付と時間、ファイル名を表わしています。

システムの使うファイルも見たいときは (UNIX では先頭に "." の付いたファ イルは ls で表示されない) "ls -a"、ファイルの種類を表示させるときは "ls -F" です (ファイル名の後に、実行可能ファイルは "*"、ディレクトリは "/" などがついて表示される)。また、これらのオプションは組み合わせて "ls -al" のように使うこともできます。

ディレクトリ tmp の中身を見たいときは、"ls tmp" とします。

    duck{asada}6: ls tmp
    MH.doc          guide.tex       jikken.1.tar.Z
    audio           guide.tex‾      shukei.pl
    duck{asada}7:
ディレクトリを移動するには "cd ディレクトリ名" とします。

その他よく使うコマンドとして、ファイルのコピーを行なう "cp"、 名前の変更と移動を行なう "mv" があります。それぞれ

    cp filename1 filename2    filename1 を filename1 にコピー
    mv filename1 filename2    filename1 を filename1 に変更
    cp filename dirname       filename を dirname にコピー
    mv filename dirname       filename を dirname に移動
です。またファイルの削除は "rm filename(s)" によって行ないます。ディレ クトリの作成と削除は "mkdir", "rmdir" です。それぞれのコマンドはオプショ ンを付けることによって動作が変わってきますので、詳しくはマニュアル等を 見て下さい。

よく使うコマンドと対応する (近い) MS-DOS コマンドの一覧を挙げておきます。

   コマンド              機能                  MS-DOS では

    pwd        自分のいるディレクトリを表示      CD
    ls         ファイルの一覧を表示              DIR
    cat        ファイルの内容を連結              TYPE or COPY
    more       ファイルの内容を一画面ずつ表示    MORE
    cp         ファイルをコピー                  COPY
    mv         ファイルの移動、名前の変更        REN
    rm         ファイルを削除                    DEL
    cd         ディレクトリを移動                CD
    mkdir      新しいディレクトリを作る          MD
    rmdir      ディレクトリを削除                RD
    compress   ファイルを圧縮する
    uncompress 圧縮されたファイルをもとに戻す
    zcat       圧縮されたファイルを標準出力に出力する
    lpr        ファイルをプリントアウト          PRINT
    man        オンラインマニュアルを見る

ファイル名

UNIX のファイル名は、255 文字以内の任意のアルファベット、数字、記号の 組合わせです。ただし、"* ? [ ] > < ; | ! " + ' /" などの文字は、普通は 使うことができません。これらの文字は、UNIX では特殊な意味を持った記号 だからです。

パーミッション

時々 permission denied とか no write permission などのメッセージに出 会うことがあります。UNIX はマルチユーザの OS なので、他人に勝手にファ イルを見られたり、書き換えられたり消されたりしないように、パーミッショ ンと言うものを設定できます。

ためしに、"ls -al" とやってみてください。最初の方に "r" とか "w", "x" が並んでいると思います。これがそのファイルのパーミッションを表しており、 最初の文字はファイルのタイプ(普通のファイルであるとか、ディレクトリで あるなど)、次の三文字が自分、次がグループ、最後が他人のそれぞれ"読み込 み"、"書き込み"、"実行"ができるかどうかを表しています。

このパーミッションを変えるためのコマンドが "chmod" です。使い方は、

    chmod [1][op][2] [ファイル名]
です。ここで [1]、[op]、[2] はそれぞれ、
    [1] ... 誰に対してか
                  u ... ユーザに対する許可
                  g ... グループに対する許可
                  o ... その他のユーザに対する許可
    [op] ... どうするか 
                  + ... を追加します。
                  - ... を削除します。
                  = ... を明示的に代入します
    [2] ... 何を
                  r ... 読み取り許可
                  w ... 書き込み許可
                  x ... 実行許可
例えば loveletter というファイルを他の人に読まれないようにするために は、"chmod go-r lovelotter" とします。詳しい使い方は各自で調べてみてく ださい。

フォアグラウンドとバックグラウンド

時間のかかる処理で特に結果を急がない場合 (例えば大きめのファイルの圧縮 やコンパイルなど) は、そのコマンドをバックグラウンドで実行するとよいで しょう。

コマンドを実行するとき最後に "&" を付けると、そのコマンドはバックグラ ンドで実行されます。バックグランドで実行した場合、コマンドの終了を待た ないでプロンプトが帰ってくるため、すぐに次の作業に移ることができます。

オンラインマニュアル

UNIX には、オンラインマニュアルというなかなか便利なものがついています。 これは、コマンドの使い方を忘れたときや、詳しい使い方を知りたいとき
    man [コマンド名]
とすることにより、そのコマンドのマニュアルを表示してくれるというもので す。

試しに、man コマンドのマニュアルを見てみましょう。

    man man
と入力してみてください。マニュアルが画面に収まらないときは、(大概そう なるけど)画面の最下行に
    ---More--(13%)--
のように表示されます。これは、全体の 13% まで表示されたという意味で、 ここでスペースキーを押せば次のページを、リターンで一行ずつ表示、"q" で 終了です。

シェルの機能

UNIX では、"シェル" というプログラムがユーザの入力したコマンドを解釈し て実行しています。このシェルにはいくつかの種類があり、少しずつ環境や使 い勝手が異なっています。

代表的なものに、AT&T で開発された Bourn Shell (通称 B シェル) と UCB (カリフォルニア大学バークレイ校) で開発された C Shell があります。ここ では C シェルについて説明します。

パイプとリダイレクション

UNIX では、ファイルの内容やあるコマンドの出力をほかのコマンドの入力と して使ったり、コマンドの出力をファイルに格納したりすることができます。 このような機能は MS-DOS にもありますが、UNIX ではかなり徹底されており、 様々なコマンドの出力を組みあわせることによって、かなり柔軟な処理ができ るようになっています。

これはの多くのコマンドが "標準入力"から入力を行ない、"標準出力"に出力 するように設計されているからです。なるべく見習いましょう。
普通は入力はキーボード、出力はディスプレイですが、">" を使うことによっ てそれらを切り替えることができます。例えば、ファイルの詳しい一覧を "filelist" というファイルに書き込むには、
    ls -al > filelist
とするだけでできます。さらにこのファイル内容を、並べ変えを行なう "sort" コマンドの入力にするには、
    sort < filelist
とすればよいです (実はこの場合は sort filelist でいいんだけどね。) また、出力をファイルの最後に追加したい場合は ">>" を使います。

あるコマンドの出力をほかのコマンドの入力にするときは、パイプという機能 を使います。これは、コマンドを " でつなぎます。例えば "file1" の内容 をアルファベット順に並べ変えて一画面ずつ表示するには、

    cat file1 | sort | more
とします。

このパイプとリダイレクションは、うまく使うととっても便利な機能なので ぜひ試してみて、マスターしてください。

ヒストリー機能

コマンドを入力する場合に、その前に入力したコマンドをもう一度実行したり その一部を修正して実行したいという場合があります。ここでは、それらのコ マンドをもう一度入力せずにすませる方法を紹介します。

次のようにすることによって、以前に入力したコマンドを実行することができ ます。

    !!    直前のコマンドを再実行します。
    !-2   ふたつ前のコマンドを再実行します。
    !-n   n は整数です。n 行前のコマンドを再実行します。
    !n    n は整数です。ヒストリーリストの n 番のコマンドを実行します。
    !s    s は文字列です。ヒストリーリストを遡ってコマンド行の先頭が文
          字列 s と一致するコマンドを再実行します。

直前に入力したコマンドを一部修正して実行することもできます。これには、 直前のコマンド中の変更したい文字列を "^" で囲んで、そのうしろに新しい 文字列を書きます。例えば、

    duck{asada}8: cat hollo.c
    cat: hollo.c: No such file or directory
    duck{asada}9:  ^o^e^
    cat hello.c
     include <stdio.h>
    main()
        printf("Hello, World. );
     
    duck{asada}10:
のように、ちょっとした打ち間違いを正すときなどによく使います。

ジョブコントロール

エディタを使っている途中や、実行時間の長くかかるコマンドの途中で、少し だけ他のコマンドを使いたくなるという事は、よくありますね。シングルタス クの OS の場合は、実行が終るまで待たなければなりません。マルチウィンド ウシステムを使っている場合は、別のウィンドウを立ち上げるという方法もあ りますが、それも面倒です。

csh にはジュブコントロールといって、実行中のコマンドを一旦停止させて、 別のコマンドを実行したり、バックグラウンドで実行させたり、再びフォアグ ラウンドに戻したりする機能があります。

まず、何か適当な (すぐには終らない) コマンドを実行してみてください。例 えば "more .cshrc" などを実行したとします。画面に .cshrc の内容が表示 されて、キー入力待ちになります。そこで ctrl-Z (コントロールキーを押し ながら Z) を押すと、

    --More--(36%)--
    Suspended
    duck{asada}11:
と表示されて、コマンド入力待ちになります。ここで適当に作業をして、終っ たら "fg" (FourGround) と入力すれば、中断したジョブが再開されます。ま たここで "bg" (BackGround) と入力すれば、そのジョブはバックグラウンド で実行されます (ただしそのジョブでキーボード入力が必要になった場合は "[1] + Suspended (tty output) more .cshrc" といってまた中断します)。

バックグラウンドで実行しているプログラムを、フォアグラウンドに戻したい 場合は "fg" と入力して下さい。

正規表現

ファイル名の検索などに正規表現を使うことができます。コマンドの引数にファ イル名を与える場合、"*" は 0 文字以上の任意の文字列にマッチし、"?" は 任意の 1 文字にマッチします。

"{A,B,…}" (A,B,… は文字列) は A,B,… のどれかに、"[…]" (…は複数個 の文字) は、その中のどれか1文字とマッチします。また "[a-e]" のように "-" 記号によって範囲を表わすこともできます。

さらに、正規表現とは少し違いますが、"‾" で自分のホームディレクトリを、 "‾name" で name さんのホームディレクトリを表わすことができます。

ただし、コマンドにこれらの文字列が渡されるとシェルがこれらをファイル名 の列に変換してから渡すため、逆にコマンドにこのような文字を渡したい場合 "'" などで閉じるか、"¥*" のようにする (エスケープするという) 必要があ ります。

別名機能 (エイリアス)

シェルにはコマンドに別名を付ける機能もあります。長いコマンド名やよく使 うコマンド、いつも付けるオプションなどは、このエイリアス機能を使って、 簡単に入力できるようにしておくといいでしょう。例えば毎回 "ls -F" と打 たなくても、
    duck{asada}12: alias ls ls -F
    duck{asada}13: ls
    Calendar/       News/          hello.c        tmp/
    Mail/           a.out*         source/
    duck{asada}14:
のように、"ls" を "ls -F" にエイリアスしておくことができます。

また、コマンドの引数は " で表わすことができます。例えば、"cd " コマン ドを実行したときに、移動した先のディレクトリ名を表示するために、"alias cd 'cd !*;pwd'" というような事が可能となります。

サーチパスと初期設定ファイル .cshrc

いくつかのコマンドを紹介してきましたが、コマンドの「実体」は何処にある のかご存知でしょうか? UNIX には沢山のコマンドが用意されていますが、そ れらの多くは /bin, /usr/bin, /usr/ucb 等のディレクトリに納められていま す。

コマンドの実体がどこにあるのか調べるためには、"which" というコマンドを 使います。

    duck{asada}15: which ls
    /usr/bin/ls
    duck{asada}16: which cd
    cd: shell built-in command.

"path" という変数を設定することによって、コマンドの実体を何処から、ど ういう順番で捜すかを指定することができます。どのように設定されているか は、"echo" を使って見ます。

    duck{asada}17: echo  $path
    /usr/ucb /usr/bin /usr/etc .
    duck{asada}18: set path=(/usr/local/bin $path)
    duck{asada}19:
この例では、現在の path の設定に加えて、/usr/local/bin というディレク トリを最初に捜すように設定しています。

さて、エイリアスやパスの設定を毎回手でやるのは面倒ですね。このような毎 回使うような設定は、ホームディレクトリの下の ".cshrc " というファイル に書いておくことによって、起動時に自動的に実行されます。

多分皆さんのディレクトリには、既に .cshrc ファイルがあると思いますので、 望みの設定を書き足せばよいでしょう。

tcsh

ここで紹介した csh は、ほとんどのシステムに附属していますが、この csh の機能を拡張した tcsh というシェルが、フリーソフトウェアとして普及して います。

tcsh は、カーソルキーやコントロールキーを使って、ヒストリを直接エディッ トする機能や、途中まで入力したファイル名を完成させる機能などが付け加え られており、かなり使い勝手がよくなっています ただし、一度これに慣れて しまうと、普通の csh が不便に感じて困るという欠点(笑)があります。

エディタについて

「エディタ」は重要なツールです。文書を書くのもプログラムを入力するのも (普通は) エディタを使いますから、これの操作性が環境のよしあしを決める 重要な要素になります。また、エディタは各人の好みがはっきりと分かれる部 分でもあり、自分の好むエディタを贔屓するばかりに、激しい論争になること もしばしば見受けられます。エディタは、もはや宗教であると言っても過言で はないでしょう。

…というのは大袈裟ですが、エディタが重要であるのは本当です。

UNIX 上で動くエディタ

UNIX 上で動作するスクーンエディタとして、vi と emacs が有名です。vi は UNIX に標準で備わっているエディタで、独自の操作法を使うため、初心者に とってはとっつきにくいかもしれません でも慣れればかなり使えるんですよ、 これ。

GNU Emacs (を日本語化した Nemacs や多国籍対応版の mule など) はフリー ソフトウェアとして広く利用されています。vi と比べるとワープロやパソコ ン用エディタに近い操作性を持っています (コントロールキーを使いまくる独 特のキーバインドには若干の慣れが必要ですが)。また、単なるエディタに留 まらず、Emacs の上から電子メールやニュースを読んだり、様々なネットワー クサービスを利用したりもできます。難を言えば少々バカでかいことですね…。

その他のエディタとして Sun OpenWindows に附属の textedit、HP-VUE の ved など OS やウィンドウシステムに附属のものがあります。これらは大体マ ウス等をサポートしており、非常にとっつきやすいのは確かです。ただ機種や 環境に依存していることと、動作が遅いものが多いことが残念です。

NxEdit というフリーソフトウェアのエディタのように、割合 MS-DOS 上の MIFES 等のエディタに近い操作性を実現しているものもあります。また商品 では Final が MS-DOS から UNIX に移植されています。

ネットワークとは

LAN という言葉をご存じでしょう。ワークステーションは 1 台でも役に立ち ますが、複数のマシンをネットワークでつなぐことによって、さらに色々なこ とができるようになります。また、さらに広いネットワークを利用すれば、日 本全国のコンピュータ、あるいは世界中のコンピュータの情報を利用すること もできます。

現在、UNIX を使ったシステムを中心に幾つかのネットワークが作られています。 そこでは電子メールやニュースを中心に様々な情報交換が行なわれており、研究 活動 およびその休憩時間(笑) の手助けをしています。

ここでは、研究室内でのネットワークについて、いくつか知っておいて欲しい ことについて書いておきます。

IP アドレスとホスト名

ネットワークに繋がれた計算機 (ホストと呼ばれる) は、IP アドレスと呼ば れる番号によって識別されます。IP アドレスとは "." によって区切られた 4 つの 8 ビットの整数によって "133.82.189.162" のように表わ します。

しかし、毎回このような番号を書くのは面倒でもあり、間違いも多くなります。 そこで実際は、もっと覚えやすい「名前」を付けて管理します。これが「ホス ト名」と「ドメイン名」です。

ホスト名というのは、それぞれの計算機に付ける名前であり、ドメイン名とい うのは、LAN のひとつの基本単位に付けられる名前です。例えば私のところで は、"icsd6" というドメインに、"duck", "plover","gull"…といった名前の ホストが繋がっています。

ドメインというのは木構造になっていて、私のいる icsd6 ドメインは、情報 工学科 "tj" の下にあり、さらに tj は千葉大学 "chiba-u" ドメインの一部 です。以下同様に "ac" (教育機関), "jp" (日本) という名前があり、これら を全部合わせた "duck.icsd6.tj.cchiba-u.ac.jp" という名前によって、今私 が使っているホストを全世界から参照できることになります。

リモートログイン

自分が別のあるホストにユーザとして登録してあれば (アカウントを持ってい れば)、ネットワークを通じてそのホストにログインしたり、コマンドを実行 させたり、ファイルを送受信したりできます。

手元のホストから、他のホストにログインするためのコマンドが

   rlogin   [ホスト名]
です。他のマシンでコマンドを実行して、その結果を自分の計算機で表示した いときは、
   rsh   [ホスト名] [コマンド]
です。またネットワークを通じてファイルをコピーしたいときは、
   rcp   [こっちのディレクトリ] [ホスト名]:[ディレクトリ] (送るとき)
   rcp   [ホスト名]:[ディレクトリ] [こっちのディレクトリ] (受取るとき)
とすればよいです。

telnet と ftp

rsh や rcp 等のコマンドには、相手側のホストに (パスワードなしで) ログ インできなければならないなど、いくつかの制約があります。そこで登場する のが、telnet と ftp です。telnet、ftp はそれぞれ、他のホストにログイン する、他のホストとの間でファイル転送を行なうための専用のツールで、 なコマンドが用意されています。

特に ftp はネットワーク間で複数のファイルをやり取りするときに重宝しま す。また匿名 ftp といって、誰でも自由にファイルを持ってゆくことができ るような機構を実現している所も沢山あり、公開された文書やフリーソフトウェ アなどの配布が行なわれています。

ここでは詳しく述べませんが、必要になることもあると思いますので、ぜひ調 べてみてください。

NIS と NFS

NIS とは Network Information Serviceの略で、色々な設定(例えば、ユーザ の登録、パスワードの設定など)をネットワークを通じて共通で行なうことが できる機能です。また、NFS は Network File System の略で、他の計算機の ディスクなどを自分の計算機のディスクのように使うことができる機能です。

これらを使うメリット、デメリットは、

などです。

このような話は、普通に使っている限りは意識することはないのですが、まぁ 知識として知っておいても良いでしょう。

ネットワークには、沢山の機能・多くの利点があります。さらに最近は WWW, gopher, wais などといった、遠隔地の情報を自由に参照するためのシステム が非常に活発になっています。

また、UNIX 同士だけでなく、大型機やパソコンと接続して、互いの長所を生 かしたシステムを作ることもできます。皆さんも必要に応じて勉強して、どん どん活用して下さい。