他にはない<基本>、それが俺たちにはあると思ってるから。

“BEAT TOWN PRODUCTION”を名乗り、水戸からSTINKYなビーツを
信し続けるDJ:DENKA。新旧HIP HOPからダンス・クラシックス、レア・
ルーヴまで深く掘り下げ、L.T.S.にソウルを注入し続ける陰の主役だ。
 
 「年上の人に憧れて小さい頃から中学生と遊んでた」という少年期を経て、中学の
終わりからはバイクや車に打ち込む日々。が、ある日バイクで深刻な事故に遭遇。
1年間まともに歩くこともままならない生活を経験し、この頃から音楽にのめり込み
める。間もなく知人のショップで働き始め、同僚のDJやダンサーと過ごすにつれて、
「自分もDJになりたい」という思いを強くしたと言う。
「聴き出したのはLL・クール・J、デ・ラ・ソウルとかだったけど、DJとして大きかった
は『ULTIMATE BREAKS&BEATS』の『IN PEACH THE PRESIDENT』。トリック、スク
ラッチが好きだったから、あの曲で指が真っ黒になるまで練習してた」
「自分でも訳も分からずテープとか作ってみて、近所のショップに持っていって聴か
たりして、『じゃあパーティでもやろうか』みたいな…、そんな始まりだった気がする」。
 リアルタイムで最も影響されたのはファンクマスター・フレックスとストレッチ・アーム
ストロング。今につながる<黒い>プレイが次第に像を結んでいく。その噂を聞きつけた
GOCCIと現場で何度かニアミスの後、東京のショップで偶然対面。これがL.T.S.結成
引き金になった。
 オリジナル・メンバーでの活動期間を経てTAD'S A.C.が加入、95年には現在のライ
ンナップに。それから2年後の97年、DEV LARAGEに手渡した一本のデモ・テープが、
彼らの運命を大きく変えることになる。「3人でDEV LARGEの部屋に行ったのかな。
10分テープかなんかをショボ~いラジカセで聴かせて(笑)。それでDEV LARGEが気に
入ってくれて、コンタクトとか取れるようになって」。
 EL DORADOからは計4枚のシングルをリリース。ファンクネス満タンのトラックを提供
し、プロデューサーとしてのDENKAにも視線が注がれ始める。GOCCI/DENKAの二面
性が認識されはじめたのもこの頃からだ。「GOCCIは頭脳、俺は肉体的な面っていう
感じだけど、曲によってそれが入れ代わる時もあるんですよ。ごくたまに、だけど」。
 <DJの目から見たGOCCI/TAD'S A.C.の違い>について問うと、ユニークな指摘が
ってきた。「案外GOCCIは大雑把(笑)。ああ見えて、ある部分では俺に似てる部分
るんですよ。TAD'S A.C.は結構細かいですね」。
 そして待望のメジャー進出。フル・アルバムの曲作りを控え、彼の目はどんなところ
見据えているのだろう?「俺個人が強調していきたいのは<DEV LARGEとMUROを真に
通ってるのは俺だ>ってこと。絶対出したいですよね、それは。<ここを俺らが通ってい
んだよ>って証明したい」。
 では、L.T.S.だけが持つ、他者にはない特色とは何だろう?
「<基本>ですかね。他にはない<基本>、それが俺たちにはあると思ってるから。それ
作品で…、言葉で言えるような簡単なもんじゃないですから。」