日本版 Jargon File

本ファイルはオリジナルの The New Hacker's Dictionary に準じて、国産ハッカー語をコレクションしたものである。収録基準は、

  1. 本家 The New Hacker's Dictionary に収録されない日本固有のハッカー表現であること。
  2. 日本におけるハッカー習俗を明快に表現するものであること。
  3. 国産機種・ソフトなどの単なる解説ではなく、それに対する明確な評価やハッカー気質が表現されていること。

とする。ハッカーが活躍する(した)ジャンルであればとくにジャンルは問わない。本ファイルには80年代初めのベーシカーの懐かしい表現も多数含まれている。本ファイルに追加したい単語があればメールを頂きたい。検討の上追加する。なお、編者はゲーム業界には詳しくないので、ゲーム業界のスラングを歓迎する。

注記:本 Jargon File は、いわゆる「クラッカー系」隠語は扱いたくない。「串」とか「垢」とか言っても、ユーモアのカケラもなく、陰惨な雰囲気が立ち上るばかりで、技術センスを筆者は感じない。だから、こういうものは絶対に採用しない。

それでは、オリジナルにならって、Happy Hacking!

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目次

IT
ASCII(社名ではない)
アニマル本
Windows98
裏VRAM
英語コメント派
SE
Emi-Clock
LHA
オーム社
おそ太郎
KABA
ガマの油
切る
クッキー対将軍事件
強盗有害論
小人さん
この子 追加 11/4
grep毛沢東
コンパイル煙草
コンビニ関数 NEW 11/4
サッポロ・シティ・スタンダード
さらにもう一つの
シーケンシャル・アクセス
J3100
自動羊
ジャストシステム
シャープ
上司の決裁
常駐もの
情報
情報産業
人類猿化計画
スレッド化
体育会系
大名
第二種情報処理技術者試験
第五世代コンピュータ
駄右衛門
タコ
叩く
タバコ
小さな親切、大きなお世話
知的土方
茶本
吊しの背広
吊しのマシン
デフォルト
TRON
トントカイモ
ナナオ
なめる
neco
256倍
日電
ネスト
半角カナ
PG
プログラマ時計 NEW 9/2
ペケポン
ベーシカー
ペリカンcurses
hogehoge
掘る
ボーレート
Mind
マッキン
マック猿
ミカカ
もったいないお化け
Yahoo
UNIXもがき
ラクダ本
LIO
レレレのおじさん


IT

n.株屋が発明し、史上最低に近い支持率を誇った総理大臣が広めた未定義述語。ハッカーは基本的に無意味かつ不正確な用語を使わない傾向にあるので、これは絶対に使われない用語の1つである。筆者も正確な意味を知らない。

ASCII(社名ではない)

n.主としてアスキー社のライターたちが、American Stardard Code for Infomation Interchange コードについて触れるときに使用するギャグ。愛社精神にあふれているとは誰も思わない。

アニマル本

n.O'Reilly 社刊のコンピュータ書籍が表紙デザインを動物で統一していることからついた愛称。日本ではアスキー、オーム社、O'Reilly JAPAN とかなり分散した出版社から邦訳が出ているので結構混乱する。

Windows98

n.まもなく発売されるマイクロソフト社の時期OS(初版執筆時)。それだけならジャーゴンファイルへの収録対象ではないのだが、国内ではNEC−PC98シリーズが、Windows の初期にはその独自仕様から移植問題が生じていたことから、Window と98とか合体する新OS名が皮肉な目で見られている。当初マイクロソフト社はこの名称を回避するために97年に発売する予定だったが、遅れて98年にずれこんだ。これはきっとNECの陰謀に違いないと噂されている。(第2版注記:NECのシェアは下がる一方である)

裏VRAM

n.PC9801シリーズのプログラミングで多用された技。98シリーズの特徴に、VRAMが表裏2枚あって、それを切替えて高速表示をすることができたが、それを悪用して malloc(3) するかわりの作業用メモリとして使えた。考えてみれば邪悪な技だが、大量の作業用バッファが必要な時には便利であった。副作用として、

1.排他制御がない。
2.使用中にVRAMが切り替わると、ゴミが画面に表示される。

などの楽しい結果が待っている場合もあった。
そういえば遂にPC9801がお亡くなり(生産中止)になったそうである....ご冥福をお祈りいたします。まだ生きていたんだねえ!(2003.11/4)

英語コメント派

n.日本国内でもプログラムのコメントは英語であるべきだという主張をもつ一派。理由はコメント内でも特殊なキャラクタが英語版コンパイラで障害を起こすことや、日本語コードにJIS,Shift-JIS,EUCと3種類もあって、mule のようなエディタを使わないと文字化け状態になる可能性が高いこと、全角半角が混在すると読みにくく美しくないことが挙げられる。反対派の強力な反論が「読むには読めても自分では書けない」「スペルミスして恥ずかしい」といったあたりであることが、日本のプログラマの語学力をうかがわせる。

SE

n.年老いたPGのこと。PGが年老いると年齢相応の給料が払えなくなり、「SE」に呼称が変るという日本独特の慣習がある。

Emi-Clock

n.美少女コスプレ時計ソフトとして有名なフリーソフト。ノリの軽さとオタクなデザイン、それに加えてX-Window,Windows,Mac-OSと主要ウィンドウシステムをすべて制覇した初の変形ウィンドウの国産ソフトとして知られる。起動音は合コンの際に録音したという反geek的伝説がある。

LHA

n.国産汎用圧縮ソフトウェアの定番。LHAがフリーソフトとしてソース公開されたため、日本国内では米国産商用圧縮ソフトである arc や pkzip がまったくマイナーな立場に置かれるという国際的に見て特殊な状況が生じている。

オーム社

n.お年を召されたお偉い工学系大先生がお書きになられた、「素晴らしい」コンピュータ技術書を出版する版元。要するに時代遅れで、プログラマにとってはまったく役に立たないコンピュータ技術書が多数なので、まずハッカーの本棚には並ばない版元の正準例としてよく名指される。

おそ太郎

n.ジャストシステム社のベストセラー・ワープロソフト「一太郎」の標準罵倒表現。バージョンによる区別をするための「三太郎」(ver 3.x), 「四太郎」(ver 4.x) という非罵倒表現もあった。

KABA

n. Kyoto Artificial Brain Associates. カバをシンボルマークとする京都大学の人工知能研究グループ。ここで開発された Kyoto Common Lisp は国際的に唯一認知されている国産実用言語仕様であると言っても過言ではない。またここで開発された prolog-KABA などを使った記憶のある言語ハッカーも多い。

ガマの油

n.マイクロデータ社がかつて販売していた、いにしえのコピープロテクト破りキット。同じシリーズに「まむしの執念」というのもあり、ネーミングの強烈さで記憶に残る。マイクロデータ社は「エコロジー」(統合シェル&FATエディタ)とか「ノストラダムス空飛ぶジュータン」(ディスク・デフラグメント)など光るネーミングで98用ツールのシェアをかつては持っていた。

切る

vt.構造体を宣言したり、マクロを定義することを「構造体を〜」「マクロを〜」と言い慣わす。

クッキー対将軍事件

n.大手商用ネットNifty-Serve で94年に起きた、哲学の会議室ユーザ同士の反目といじめから裁判にまでなった事件。どう調べたのかプライバシーを暴くなど、過激かつ悪質な手段がとられて紛糾した。

強盗有害論

n. Dijkstra の「Goto Statement Considered Harmful(Goto文は有害であると考えられる)」のユーモラスな訳題。「強盗」は有害に決まっている。

この子

pron. コンピュータに対する代名詞。「この子は最近不調だ」「この子はネームサーバなので」とかいう風に使う。見た目がオジサンの管理者などが「この子」を連発すると、幼稚園の先生みたいでなかなかカワイイ。アメリカでもやはり「She」とかの代名詞を使うのだろうか?

→どうやら「this guy」とか「that guy」という風にソフトウェアを人に見立てて呼ぶ風習がアメリカでもある、というご報告を頂きました。IIDA Yoshiaki 様、ありがとうございます!

小人さん

n.コンピュータの詳細な動作についてのタコな質問を、ハッカーが煙に巻くためにある架空の存在。「コンピュータの中にはね、小人さんたちがたくさん住んでいてね」の要領でメルヘンチックに解説(?)できるために、なごやか(?)にその場を取り繕うことができる(かもしれない)。

grep毛沢東

n.Unicode推進派のスローガン。漢字を使用する東アジア諸国での各国語テキストに対して、どの言語でも同じように grep(テキスト検索コマンド)が可能になるべきだという主張の極端なサンプル。

コンパイル煙草

n. 喫煙者のプログラマが make を叩いた後に行なう儀式。かつては make を叩くとその後30分程度は仕事にならなかった。なぜって? CPUが遅いので全ソースをコンパイルする make 作業に今から見れば異様な時間がかかったからである。この風習は嫌煙運動とCPUの性能向上によって廃れつつあるが、儀式としては残っている。

コンビニ関数

n. 非公式の技術用語として「コンビニエンス関数」という呼び方がある。これは正規のインターフェイスとして定義されている関数に加えて、例えば特定の型に限って安直にアクセスできるようにした関数をそう呼ぶのだが、日本人の通例として「コンビニ関数」と略されやすい。しかし、「コンビニ関数」はよほど気をつけて書いておかないと、後で「何でこんな関数があるんだろう?」と悩むハメに陥るので要注意である。

サッポロ・シティ・スタンダード

n.懐かしのカセット・テープ保存の転送規格。2400baud である。これはカンザス・シティ・スタンダード(1200baud)に対抗してこう呼ばれた。(Newbeのために注意。音楽用のカセット・テープにプログラムを保存するんだよ!)

さらにもう一つの

a.ハッカー文献に頻出する `yet antoher' は「さらにもう一つの」という生硬な訳語で訳さなくてはならない、という暗黙の掟が存在する。

シーケンシャル・アクセス

n.食事をするときに、一つの料理が終わってからでないと、別な料理を食べない食べ方。すべての皿に平等に手を出すのは「ランダム・アクセス」と呼ばれる。特に串カツの処理において、シーケンシャル・アクセス処理とランダム・アクセス処理の違いが明らかになる。

J3100

n.東芝が販売したラップトップコンピューター。このJ3100はアメリカではAX互換マシンとして好評だったが、日本国内ではAX互換と言えないような変な日本語DOSが載ったため、価格の高さと相まって商業的にも成功しなかった。日本の汎用機・家電メーカーがパーソナル・コンピュータという世界を理解できなかった典型例としてよく挙げられる。

自動羊

n.オートマトン(automaton)のユーモラスな訳語。当然、P.K.Dick の名作SF「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」(映画「ブレードランナー」の原作)を踏まえている。

ジャストシステム

n.徳島に本社を持つソフトハウス。ワープロソフト「一太郎」で有名。しかし本ジャーゴン・ファイルで取り上げるのは、DOS時代のジャストシステム専用の統合環境であるJust Window についてである。Just Window は、自社の様々なソフトを起動するシェルとなっていただけではなく、独自の実行形式(*.JEX)を解釈し実行する環境でもあった。リバース・エンジニアリングを難しくするための防衛策という意味もあったのだろうが、おそらくジャストシステムは日本の企業にしては珍しくOSを作ろうという野望に燃えていたのではないかと推測される。

シャープ

n.日本のコンピュータ関連大企業で、液晶技術ではほとんど独占的な地位を占める。とはいえほとんど道楽ともいえるシャープの独自規格のコンピュータ、X68000シリーズは日本国内ではホビイスト・マシンとしてハッカーに愛された。とはいえ商業的にはさほど成功せず、最近では互換機兼モバイル機器のメーカーとなっている。「目のつけどころ(だけ)がシャープでしょ」というコピーが有名だが、ハッカー的用法では「アイデアはいいんだが、オタク的」という意味で使われる(かもしれない)。

上司の決裁

n.「上司の決裁」が要るものの正準例は、グローバル変数を新たに宣言することである。堅めのソフトハウスに多い社内慣行。

情報

n.情けに報いること。

情報産業

n.情けに報いることの少ない産業のこと。一般に「〜産業」を多用する背広族は、「〜寄生虫」と呼び代えた方がよかろう。

常駐もの

n.いわゆるTSR(Terminate but Stay Resident)。MS−DOSで割り込みをフックし常駐終了システムコールでメモリに常駐する。これによってOSや command.com の機能を向上させようとするのが目的である。海外では Side-Kick などの商用TSRが有名だが、日本では "neco" が「常駐もの」の初期の例として有名で、DOSハッカー達がさまざまな常駐ものを工夫した。

人類猿化計画

n.Machintosh ユーザを「マック猿」と蔑称する習慣のその他への拡張。 Windows 95以降、Windows も妙にマックに日和ったデザインに転換したことにハッカーたちは危機感を感じた。そこで持ち出された架空の陰謀計画がこれである(第一次)。さらに、ブラウザによるネットサーフィンの流行が、由緒正しい利用法(telnet を使うんだよ!)を可能だった長閑なインターネット環境(finger してもいいとかね)を破壊したことに対する、怒りのコメントとして「第二次〜」が寄せられるようになる。

スレッド化

n.傍らで暇そうにしている同僚に仕事を押しつける時の口実。

体育会系

n. COBOLER(COBOLを使ってプログラムをするPG) のこと。COBOLER系サイトでは、堂々とこれを名乗っている。COBOLER の習性を見る限り、この表現は当たっている。

大名

n. PCプログラマが汎用機出身の不勉強なCプログラマに対して浴びせかける罵倒語。資源の限られたPCでプログラムする時も、資源に対する無頓着さをそのままにプログラムする汎用機出身者を馬鹿殿に見立てている。しかし、最近のメモリの値崩れやOSの肥大化によって、PCでも大名スタイルが一般的になりつつあり、遠からず廃語となるようである。筆者の個人的記憶では、某現場で作業したとき、ある優秀ではない汎用機系PGがクソ大きい配列を自動変数として確保したのには言葉を失った。

第二種情報処理技術者試験

n.役立たずの代名詞。(ちなみに2001年度から、名称は「基本情報処理技術者試験」に変った。さらに恐るべきことに、これを上回る無能な資格として「初級シスアド」が登場している。)

[背景]

この評価は、情報処理技術者試験にOSに関する具体的な知識がほとんど含まれないことに多く起因している。なぜなら、この試験は中立的第三者機関である「財団法人日本情報処理開発協会」が主催するものであり、特定のOSに肩入れした内容を出題するわけにはいかないからである。しかも内容は総花的かつ抽象的であり、現実的なプログラミング能力(ましてやハッカー度)を測定できるようなものではない。また。既に古くなってしまったような内容をまだ教えていたりするのも、お笑い草となりやすい。一般にハッカーは、教育用の不正確な記述を嫌がる傾向にあるため、いちゃもんを付けたがる傾向も見落とすべきではなかろう(「資格」がキライな傾向もあるな)。「これってホントにちゃんと理解していたら役に立つんだけど、ただ暗記しただけじゃ無意味だな」というのがハッカーの勉強科目に対する一般的な感想ではなかろうか。

第五世代コンピュータ

n.知識ベースの言語・OSを手続型言語の次世代として1980年代にプロジェクト化しようとした計画。今では誰も憶えていない。ただ現在40代のプログラマは大概これに乗せられて prolog を勉強した記憶がある。

駄右衛門

n. UNIX デーモン(daemon)のユーモラスな当て字。

タコ

n.1. luser の日本での一般的な訳語。不勉強なユーザやプログラマ、不出来なプログラム・OS・ハードウェアの広く使われる罵倒表現。2.特に Linux コミュニティでは罵倒的意味を薄めて初心者。Linux コミュニティでは「タコは財産である」という哲学がある。それは「タコ」の常識外れな操作によっても暴走しないようにするための、堅牢性チェックに有効なツールであるという考え方から来ている。

[背景]

「タコ」が罵倒表現として定着したのは、片山まさゆきの麻雀漫画「ぎゃんぶらあ自己中心派」で、麻雀のルールや技術論をまったく理解しないがそれでもツキだけでゲームに勝つ人々を「タコ」と呼んで罵倒していたことに始まる。同時にルールや技術に習熟していてもゲームに勝てないベテランを「イカ」と呼んでいた。「イカ」はまだハッカー語ではないが、不勉強な管理者などをそう呼んでみてもいいのかもしれない。

叩く

vt. プログラマが「叩く」ものはポートである。英語ではもっぱら `bashing' が使われるが、それと対応している。

タバコ

n.コンピュータの大敵にして、一部のプログラマの最良の友。

小さな親切、大きなお世話

n.WindowsやMachintoshのような典型的WIMP(Window,Icon,Menu,Pointing device)環境を不便だと感じるハッカーが、それらが原因で複合的な技などが原理的には可能ではあってもインターフェイスが存在しないために不可能になることに対して放つ怒りのコメント。

知的土方

n.職業プログラマの自己憐憫的卑称。非職業プログラマがこう呼んだら、張り倒されることだろう。

茶本

n.「実用UNIXシステムプログラミング」(塩谷修著・日刊工業新聞社・初版1986年)。有名な本をその色で識別するのは、国際的なハッカー習慣だが、かつて日本では、特にこの本が「茶本」と呼ばれた。この「茶本」はUNIXのシステムコールを日本語で解説した数少ない虎の巻として、UNIX系プログラマの間で重宝された。著者は横河ヒューレット・パッカードの技術者で、HP-UX5.0のシステムコールに従って書いているあたり、時代である。ちなみに現在入手可能なのは、1993年の第2版であるが、現在ではUNIXシステムコールを解説した本が、山のようにあることは言うまでもない。

吊しの背広

n.ソフトハウスなどのPGとして雇われているという弱い立場では、顧客との打合せだけは背広を着なくてはならない。そのために、大概背広が事務所の片隅に掛けてある。

吊しのマシン

n.完成品として販売されているマシン(互換機)。これを背広などの「吊し(既製服)」に見立てて、こう呼ぶ。

[背景]

ルーザーと異なり、ハッカーはメーカー製マシンを購入しない。自作派か、せいぜいハウスブランド互換機を購入する程度である。なぜなら、メーカー製マシンはいろいろと勝手なことをして、「互換性に欠ける」からである(特にIBM)。特にハッカーは Linux などのフリーOSを使いたがるので、「互換性に欠ける互換機」は色々と問題が起きがちであり、嫌われ者である。

デフォルト

n.(技) 暗黙値。明示的にとくに指定しない時に使われる暗黙の値。「プログラマの〜はタバコとコーヒーだ。」

[背景]

同様の用法が本家にもあるが、ここでは特に例文について述べたい。アメリカは嫌煙運動が盛んなため、アメリカのハッカーたちの間でもタバコはプログラマのデフォルトではない。かつてMITでジェリー・サスマンがパイプを愛好したために他のハッカーたちから吊し上げを食ったなどというエピソードが示すとおりである。日本のプログラマの喫煙率はかなり高いが、どうやら変わりつつあるようである。

TRON

n.ディズニーの映画ではなく、ほぼ唯一の実用的な日本発OS。東京大学の坂村健教授が開発しているが、アメリカ産OSに押されて苦戦している。とはいえ決して出来の悪いものではなく、かなり先進的なテクニックを早くから採用していたり(実身・仮身−早い話OLE)、障害者への配慮が見られたりとか、なかなか芸が細かい。一応汎用バージョンであるB-TRONはPCに移植されて発売されているし、また産業用のI-TRON(リアルタイムOS)はそれなりに使われているが、いかんせんマイナーなものに留まっているため、ハッカーには同情者が多い。(状況が最近少し改善してきたようでもある...目出度いことだ!)

トントカイモ

n. system の隠語表現。JISキーボードでカナ・キーを押したまま system と打ってみればよくわかる。同様のパターンは「ミカカ」を参照。

ナナオ

n.モニターのメーカーで、品質が良いことで有名。「三度の飯を抜いてもモニターはナナオを買え」とまで言われる。

なめる

v. 配列などを順に参照すること。「頭から−」先頭から順に参照する。最後から参照するのにこの語を使用するとセクハラとして糾弾される可能性がある。

neco

n.カーソルやマウスポンタを猫が追いかけるという、いにしえのなごみ物ソフト。MS−DOS国産TSRプログラムの初期の有名な例で、いろいろと移植や研究、模倣作が現れTSR制作が盛んになった功績が大きい。

256倍

1.n.ハッカーにとって切りのいい倍数。買物をした時に 1024円だったりすると、なんとなくうれしい。


2.「**を256倍使うための本」というタイトル・フォーマットでアスキー社から出ているコンピュータ書籍のシリーズ。ハッカー・ネタが多く、日本のハッカー習俗に多大の影響を及ぼした。

日電

n. コンピューターメーカーのNEC(日本電気)のこと。スーツやハード技術者はこう呼ぶ人が多く、一般的なハッカーとは対照的である。

ネスト

n. 階層レベルの入れ子状態を示す。多くの言語で for 文は深いネストを作り出すし、Lisp ならばカッコが深いネストを作り出す(ちなみに ANSI C では、32レベル以上のカッコを処理できなければならないと定められている)。ジョブもこのようなネスト構造を取る。つまり、元請け下請け下請けの下請け下請けの下請けの下請け....という深いネストが日本の業界の特徴の一つである。それゆえ末端下請けの立場では、SEの顔を拝んだことさえないこともしばしばである。

半角カナ

n. はっきり言っておきます。JISではいわゆる半角カナ(JIS-0201.1976)は廃止の予定が掲げられている。未だにこれが生き残っているのは、某最大シュアOSが日本語版のデスクトップにすら使用するという規格無視を決め込む姿勢が元凶である。

PG

n. プログラマー(ProGramer)の略。なんでこんな変な略号があるんだろう?大概SE(SystemEngineer)と区別するために使われる。なるほど、これは日本的奥ゆかしさの発露なのだろう。

プログラマ時計

n. プログラマはキーボードを叩くのが商売のため、腕時計が重かったりすると、「気になる・邪魔になる」で商売にならない。そこで、男でもレディスの小さな軽い腕時計をはめている人がわりといる。ゲイ趣味と区別するために、これを「プログラマ時計」と称する。社会的慣習よりも合理主義が優先する、プログラマらしい例であろう。

ペケポン

n. Windows XP(NT 5.1) の愛(?)称。評価はまさにその通り。ただし、最近流行している「eXtreme Programing(XP)」は「ペケポン」とは呼ばれない(と思う)。こっちの「XP」はハッカー好みのプログラミング方法論である。

ベーシカー

n. 主としてCプログラマの間で、BASIC 出身者及び BASIC 的なプログラミング・スタイルを指して言われる。ベーシカーのプログラムの特徴は、

  1. やたらと長い main() 関数。
  2. やたらと多いグローバル変数。
  3. goto文の使用。

これらの特徴は BASIC が構造化プログラミングの恩恵を受けていない原始語であることを示し、ベーシカーは原始人であると見なされている。しかし、元ベーシカーはベテランの間に多いので、罵倒的なニュアンスよりも少々懐かしがる雰囲気がある。

ペリカンcurses

n.UNIXの標準的なライブラリでテキスト画面表示を制御するものである curses ライブラリの日本国内仕様のバージョン。フリーUNIXの日本版ディストリビューションなどに添付されている。名前の由来は、単に(日)本語を(通)すだけの正規対応でないことを、日本通運のキャラクターであるペリカンに掛けている。

hogehoge

n. 日本固有のメタ構文変数。

掘る

vt.1.ハッカーが「掘る」対象はディレクトリに限られる。自分のディレクトリを作成するのをタコ壷を「掘る」のに例えたのではないだろうか。(憶測:どなたか教えて下さい。)

2.また、VPNの普及とともに「掘る」対象はディレクトリだけではなくなったようだ。IPv6でつないでトンネル掘って……といった表現がかなり普及しているようである。(やまがた様の情報による。ご指摘ありがとうございます。)

ボーレート

n.1. (技) 一秒あたりの転送ビット数。


2.転じて何らかの速度を示す。よく使われる例としては歩く速度や食事の際の食べる速さを通信速度に喩える。国際的には clock がよく使われるが、日本ではボーレートが一般的。おそらくBASICの時代のカセットテープ保存の速度あたりから来ていると思われる。

Mind

n.現在、サイトデザイン(株)より発売されているプログラミング言語。とてつもなくマイナーな言語だが、歴史は古い。わざわざこの Jargon File に項目として載せたのは、この言語がフルに日本語でプログラムできるという特徴のためである。例えば、
メインとは
   「こんにちは世界」を 表示して 改行する。
の要領で、hellow world プログラムが記述できるのである。英語っぽい文法のプログラミング言語は世の中に多々あれど、日本語らしいプログラムはこれくらいしかない。

マッキン

n.アップル社Machintosh の関西弁の愛称。関西ではハンバーガーの「マクドナルド」も「マック」と略されるのではなくて「マド」(「ク」にアクセントがあるのに注意)であり、これと同じ要領で略称が決まったものと推測される。

マック猿

n.アップル社のMachintoshユーザの対する罵倒表現。マック猿の習性は、

  1. バッチ化した方が楽な定型作業をいちいちマウスによって行うことしか知らない。
  2. OSをハックする楽しみを知らない。
  3. フリーソフトで優秀なものがあるにも関わらずソフトウェアは買うものだとする購買意欲。
  4. 以上のような習性を人間よりも優れた特質であるとする思いこみ。

によって定義される。しかし、Windowsで日和ったPCにも猿化の危機が迫っている。

ミカカ

n. NTT の隠語表現。JISキーボードでカナ・キーを押したまま NTT と打ってみればよくわかる。同様のパターンは「トントカイモ」を参照。

もったいないお化け

n.とても無駄の多いことを茶化して喩える表現。これは外部世界でも同様だが、ハッカーにとっては、小さなLANなのにクラスBアドレスが付与されているケースが正準例。

Yahoo

n.ヤフーがはびこれば、フヌーイムは奥に引っ込む。
(判らないルーザーは「ガリヴァ旅行記」をちゃんと読むこと!)
ちなみに筆者は神戸在住で、旧グリーンスタジアム神戸の近くに住んでいる。これが「ヤフー!BBスタジアム」と改称されたそうだ。想像するだに恐ろしいことである(某球団ファンの行いを思い出すと....)。

UNIXもがき

n.昔々、まだOSがMS−DOSじゃった頃、UNIXちゅうOSが世の中にあるそうじゃと聞いたハッカーたちは、貧弱な自分のマシンにUNIXコマンドを移植してUNIXの雰囲気を味わっとったそうな。でもそりゃ「UNIXもどき」の環境とはとっても言えなんじゃった。で「UNIXもがき」と呼ばれていたそうな。

[背景]

海外産移植コマンドの中には curses によるグラフィック指向のものもあったが、そういうプログラムはPC98の壁に阻まれるために若干の苦労が必要だったりもする。まあ、こういう状況はPC−UNIXのブームのなかで、あっと言う間に「UNIXもがき」な人々はLinuxなどに乗り換えることになって解消したのだが。

ラクダ本

n.作者の L.Wall が perl について解説した "Programing Perl"(原著 O'Reilly)。O'Reilly の動物表紙のコンピューター書籍は俗に「アニマル本」と呼ばれるが、このラクダ本と vi を解説した "vi" (表紙は駄洒落でアイアイ)がよく普及している。

LIO

n. Logical Input Output. NECのPC9801シリーズに初期からあったグラフィック処理のROM内ルーチン。N88BASICなどで使用されて、最初のPC9801のセールスポイントだったが、次第に時代遅れのお荷物となり果てた。「98ってさ、いまだにLIO乗ってんだぜ」というのが98シリーズを罵倒する際の定型表現。(第2版注記:今もあるんだろうか? NECユーザではない私は知らないが、9821以降はないんだろうね、きっと。)

レレレのおじさん

n.オンライン・ネットワークのメッセージに対するコメントが多重に重なったもののSubjectを "RE:RE:RE:オリジナルのSubject" とする習慣から、赤塚不二夫のキャラクターに掛けた洒落。

この項目は間違っている。この項目は「ー」ではなくて「ーの欠如」なのである。つまり、「コンピュータ」「プログラマ」などと、語尾の「ー」が頻繁に省略される傾向について述べようと思うのだが、この問題(zen!)は「プログラマーになり得るプログラマは真のプログラマではない」というハッカー的表現によって既に語り尽くされているように思う。とはいえ「ハッカーになり得るハッカは真のハッカではない」という表現が誤っていることは言うまでもない。
(よく判らない人は、本家Jargon File やその訳本である「ハッカーズ大辞典」を熟読せよ。さらば、道は開かれん。)


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